籠球 | ナノ



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「でも、さつきは形しっかりしてるからいいじゃん。」
「ちょっと、氷雨ちゃん!私も触ってやる!ふわぁ、やっぱ柔らかいよねぇ。」
「柔らかければいいってもんでもないんだよ。」

二人でお花畑になり始めた。
部室の外にいるキセキたちは、気まずさ半分、思春期故の興味半分で、そわそわしている。
が、中の二人が気がつくはずもなく。

「あ、今度お揃いのブラ買いに行こ?」

氷雨が弾んだ声で告げれば、嬉しそうな桃井が反応する。
扉を挟んだ外では、そろそろカオスな状況が広がりつつあった。

「合宿!今度の合宿でお揃いの持って行こうよ!」
「えー、じゃあ、色違いにしようよー。」

女の子の話は尽きないものである。
何処にそんなに話すことがあるのかと、疑問に思う程にほとんど一緒にいるはずの二人は話し込んでいた。
キャッキャうふふとなっていれば、そのまま恋愛系に話が流れても可笑しくないもので。

「さつきは最近どーお?何か進展あった?」
「だ、ダメだよー、私そう言うの初めてだから、もう、」

ふわぁああ、と謎の奇声を上げた桃井に対して、そかそか、と冷静な対処をし始める氷雨。

「あ、でも、そう言う話振ってくる人って、聞いて欲しいことがあるって聞いたことがあるよ、氷雨ちゃん?」
「うん、実は。」
「え、何々、好きな人できたの?誰だれ?テツ君じゃないよね?」

楽しそうに、若干心配を滲ませながら告げる桃井に対して、彼女は違うよーと笑う。
それから、静かにあのね、と告げた。
部室の外が静まり、中の声を聞き漏らさないようにする。

「あのね、…その、えっと、告白…された。」
「えー!誰?私の知ってる人?」
「あのさ、この間試合したところのね、…あの、先輩に。」

だんだんと声の小さくなっていく氷雨に対して、声が大きくなっていく桃井。
先ほどとはまるで反対の力関係に、やはり女の子は不思議だと関係ないことを考えていそうな黒子。
氷雨の恋愛話になってから、若干不機嫌そうに見えるキセキ数人。

「え、誰?」
「あのさ、むっ君とやってて、一人だけ諦めなかった木吉鉄平さん、わかる、よね?」
「わかったー!あの人?え、何で?」
「えと、その…試合の次の日、偶然出会って…でも、勝者が敗者にかける言葉はないと思って、通り過ぎたの。」
「うんうん、」

楽しそうな部室内の声に反し、外では空気が張りつめる。

「手、取られて、話しかけられて、一日、一緒にいて、それでその、メアドとか、交換して、」
「あ、もしかして、最近メール多いのって、」
「うん…鉄平さん。」
「え、それ、付き合って、たり?」
「………うん。」

恥ずかしそうな声に部室のドアを思いっきり開ける青峰。
が、部室内にいた氷雨と桃井は真顔で紙に書かれた『やーい、ひっかかったー』を掲げていた。

「騙された!」
「部室の声って、外に聞こえるってことわかってくれた?」

もう、と怒ったように告げる二人に、そう言えば、そんなこと言ってたような、と記憶をたどる。
ああ、そう言えば、部室だからって猥談とか聞かれちゃマズい話はしないように、と怒られた気がする、とキセキが思い起こした。
その瞬間だった。
荷物を持った、氷雨がにこり笑う。

「ちなみに、私の話ホントだから。デート行ってきまーす!さつき、また明日ね!」
「え?!」

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