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電話を終え、彼女はちょっと待ってて下さい、と船員の方へ向かった。
そこに居難そうに立ってる女性陣にいくら必要なの?と聞く。
各々の希望の金額を聞いて彼女は、全部一旦却下した。
「お前らは金を湯水のごとく使い過ぎだ。」
と、希望金額の半額、しかも、毎日決まった金額しか渡さないから、取りに来いと言い切る。
彼女たちは渋々といったようにその条件を飲み、肩を落とした。
ふと、ヒョウが彼女を呼ぶ。
「ヒサメ、血が足りてないだろ。」
「…ああ。」
ヒサメはそう言って、引き寄せた彼の首に犬歯を突き立てた。
喉を数回鳴らして、彼女はその傷跡を舐める。
綺麗に治った首筋をヒョウはひと撫でして、怪訝そうに眉を寄せた。
「少ないが…また倒れるつもりか?」
「あれは予想外の戦闘が立て続けにあっただけだ。」
私は必要以上に血を摂取するつもりはないぞ。
彼女の顔が不快そうに歪む。
その表情にヒョウも不満そうな顔になる。
「こればかりはお前の命に関わる、オレは引かん。」
「私の信念に大きく関わる、私だって引けないな。」
向き合って、二人は視線を合わせた。
ちなみに、彼女たちの船員は金額を定められたあと、欲しいものの選別に入っていて気がついていない。
なんつー、アンバランスなチームだ、と職長たちは感じたようだ。
ふと、一人が振り返る。
「ヒサメさん、明日からココに取りにくればいいですか?」
その瞬間、険悪に近かった二人の空気は一瞬にして柔らかいものにかわる。
彼女は困ったように告げた。
「あー、そうか、いや、朝にヒョウに渡しておく。ヒョウから貰ってくれ。」
「うん、わかった。」
彼女はそう言うともう一度考え込み始める。
二人の空気が元に戻った。
ヒョウと呼ばれる男が妥協だと言わんばかりに声を出す。
「明日の朝、ならいいか?」
「…仕方あるまい。お守りは任せた。」
「ああ。」
そして、彼はそのまま4人を連れて自分たちの船に戻った。
その背中を見送り、仕事に戻ろうとする彼女。
素直に送り出してもらえるはずもなく、腕を掴まれた。
「…えっと、これは、説明よろしく、ってことですかね?」
右手を捕まえたルッチ、左手を捕まえたカク。
正面に立ったアイスバーグとカリファ、後ろを塞いだパウリー。
ヒサメははあ、とため息を吐いて、ご飯でも食べに行きませんか、と提案。
その顔は脱力が一番色濃く出ていて、そのまま彼らは個室のあるレストランへ向かったのだった。