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副船長


副船長

シャボンディ諸島に上陸していたのは、麦わらの一味だけではなかった。
ハートの海賊団、キッド海賊団、それから、レニー海賊団がそこにいる。
レニー海賊団は、いつも通り乗組員全員で買い物に来ていた。
彼女たちの海賊船は特殊なもので、副船長が乗り込まないと動かないようになっている。
更に、噂によると攻撃も無効化するらしい。

「ヒョウ、アレ買って!」
「…ナコさん、それはいけません。」

ヒサメの分身であるヒョウ。
しかし、それを知らないナコは彼が自らに惚れている従者だと思い込んでいる。
後ろの方でむき出しの長刀を肩に担いだ女性がはぁ、とため息を吐いた。
勿論、ヒョウに夢中な彼女には聞こえない。

「っ、ラン、スズ、サク、私の後ろに。」

ピク、と反応した彼女は3人に声をかけて、自身の後ろに隠す。
ヒョウも辺を警戒している。

「へぇ、鈍ってねぇみたいだな。」
「まあ、これでも船員の命を守ってるから。」

刀を下げて、その男を見た。
色が黒く、隈があり、帽子を被った男。
刀は大きく、ヒサメのそれと大差ないように見える。
ふと、空気を破った声が響いた。

「あっローさんだぁ!」

その瞬間、彼女があのくそアマ、と口にしたのは彼女の後ろに隠れていた3人にのみ聞こえていた。
キャピキャピ、騒いでいる二人にはぁ、とため息を吐いた彼女。
次の瞬間3人の後ろに回って、刀で受け止めている。

「ずいぶんなご挨拶だな、キラー。」
「お前がすぐ気がついてくれるからな。」

3人は驚愕に固まっていた。
嫌な予感でスズが振り返る、とそこには一触即発な雰囲気の二人の船長が。
億越えルーキーが互いに牽制しあっており、その間で彼女たちの船長がにやけている。
スズは、悩んだ末、ヒサメに声をかけた。

「ヒサメさん、船長が…。」

キラーの武器の刃の部分をがっちり掴んで、振り返った彼女。
その額には青筋が浮かんだ。

「ふ、ざけんじゃねぇよ、あの100ベリーが!」

思わず力が入ったのか、彼女の手から出血した。
キラーが焦って、武器を引くが、彼女は何も気にしていない。
そのまま手を離してそちらに向かう。
だらだらと垂れている血に、本人以外がビビった。

「おま、手!」
「あ?ああ、こんなん怪我じゃねぇよ。それより、ナコ楽しむなら裏にでも入れ。」

てめぇは賞金が低いからどうでもいいが、そいつらは億越えルーキー。
目つけられて暴れて死なれたら、面倒だ。
どうせ、その前に助けろって喚くだろうことも含めてな。
彼女は言い切って、だらだらと血が流れ続ける手で脇道を指差した。
それから、あまりに流れている手に面倒そうに眉を寄せる。
そのまま口元に手を持ってきて傷口に舌を這わせた。
ヒョウがその手を取り、丁寧に手を拭く。
そこには傷はなく、跡すら残っていなかった。

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