朝日が昇って、それでもその光が湖上のこの城を完全には染めきらない時間。
俺は自室を出て、ある人物の部屋へと急ぐ。
この城の主の部屋へ。

薄明かりの廊下を抜け、階段…は疲れるので えれべーたで2階まで上がると、目的地はすぐそこ。
扉の前まで来ると、中の気配を窺ってからノックを2つ。(返事が返って来たことなんか一度も無いが)
今日も反応が無いことに溜め息を吐くと、軽く息を吸い込んだ後、勢い良く扉を開ける。


「王子さん、朝だぜ。いい加減起きろ。」

「んー…。」


声を掛けても小さく唸るだけで、起きる気配の全くないソイツに再び溜め息を吐く。
この城に来てから知ったことだが、どうやら王族というのはイメージとは裏腹に寝汚い奴が多いらしい。特にこの王子さんの場合、普段から何かと仕草がお上品なので、この寝起きの悪さはかなり意外だった。


「お き ろ !
早くしねぇとまたミアキスに遊ばれんぞ。」


寝台の傍へ歩み寄り、王子さんの体を揺すりながら先程より大きな声を掛ける。


「あと…5分…。」

「ってアンタそう言って5分で済んだ試しなんかねぇだろ!ほらさっさと……っ!?」


それでも起きようとせず、お決まりの科白を吐いて布団の中に潜り込む王子さんから、そうはさせるかと布団を引き剥がす。と、それを追うように腕が伸びてきて、俺の身体は寝台の中に引き摺り込まれてしまった。


「…っおい、王子さん…!」

「………あと、5分だけ…。」


布団同様、引き剥がしてやろうと思ったけれど、俺の胸に顔を埋めたまま発せられるその声が、熱く掠れているのに気が付いて。


「……5分だけだかんな。」


自分も彼の背に腕を回して、震える肩を強く抱いた。







明け方、起床5分前






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