第13話


朝起きてもイライラが治まらない。その理由は分かっている。昨日、景吾がわたし以外の知らない女と楽しそうに話をしていたから。景吾は私だけのものなのにっ!

「なんなのよっ?!あの女といい!永藤 徠歌といい!皆邪魔なのよっ!」

手元にあった枕を壁に投げつける。バシッと音がして床に枕は落ちた。そんなイライラする中、学校に行かなくてはと思い、仕度を始める。

「行ってらしゃいませ。美姫お嬢様。」

執事の声に良いことを閃き、執事を見た。

「ねぇ。この女について調べておいて。」

「はい。かしこまりました。」

1枚の写真を執事に渡す。そこには昨日、景吾と一緒に居た女が写っていた。

ふふ。これであの女も地獄へ落とせる。景吾に近付く女はみーんな、同じ目に合わせてあげるんだからぁ。

そして、わたしは能天気に学校へと向かった。


――――・・・


徠歌 Side

相変わらずの学校に嫌気がさす。バカみたいだな。

「なんで生きてんだよっ?」

「死んだはずじゃないの?」

等、所々から聴こえて来る。私が死んだと思っていた人達から。

「はぁ・・。ここには馬鹿しか居ないのか?」

呆れた。ここまで来ると別の意味で凄いな。

朝練も終わり、教室へと行く途中、そんな言葉が聴こえて来たのだ。馬鹿らしくて教室へ行く気がしなくなった私はサボろうと思い、踵を返したら誰かとぶつかってしまった。

「―っ。」

「っ・・・急に振り返んなや。」

「・・・忍足か・・・悪かったな。」

聴き覚えがある声に顔を上げるとそこに居たのは忍足だった。

「でっ?急に振り返ってどーしたん?徠歌。」

「教室へ行く気無くなったからねー。」

わかるでしよ?と付け足して、周りを見渡す。私につられて同じように周りを見渡した忍足は納得したように、あぁ、と頷いた。

「それじゃ。」

そう言って忍足の横を通り抜けようとしたら腕を忍足に捕まれた。

「サボったらあかんで?・・・確か1時間目の授業は瑞希やったはずや。出らんでええん?」

私の耳元で囁く忍足の言葉にニヤリと笑いが漏れた。

「・・もう1人で授業するのか?」

「おん!」

「フッ。面白そうだな。」

忍足にしか分からないように怪しく笑った。

(徠歌、怖いわ。)

その顔を見て忍足がそう思っていたことなど知るよしも無かった。

「じゃあ、行くとするか。」

そう言って教室へ向かって歩き出す。忍足も私の横に並んで歩きだした。

「どんな授業するん?」

「さぁ?教師改革の方は瑞希達に任せてあるからな。」

「?教師改革?なんや、それ?」

「ん?あーそう言えば、知らないんだったな。景吾に依頼されたんだよ。景吾に協力して貰う事を条件に教師の方の意識や授業内容の変更等といった教師改革をするようにな。」

だって・・・酷い有様だろ?と忍足を見て言うと苦笑いをしていた。忍足も分かっていたみたいだな。授業内容が可笑しいことに。この学園が可笑しいと気付いたのは、いつかは知らないけど。まぁ、今気づいているんだから良いだろう。

「忍足も協力してくれよ。嫌われている私が何言っても生徒や先生は聞きはしないが、人気もあり、信頼もあるテニス部の忍足の言葉なら耳を傾けるはずだからな。」

「おん!もちろん協力するで!」

「ありがとう。」

そう言う話をしていると教室へついてしまった。そして、教室の中へと入り、忍足と別れて席に着き、授業が始まるのを待った。

ふふっ。どんな授業をするのか楽しみだな。楽しませてくれよ、瑞希。

そんな事を考えながら鐘が鳴るのを今か今かと楽しみにしている。

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