第8話給水塔の上で寝転び、私の所為でテニスが出来なくなった芥川のトレーニングメニューを考えている。
それにしても・・・
「暑いなー・・・」
「ほんとだねっ!」
返って来る筈のない独り言に返事が返ってきたから驚いて下を見ると希が居た。
「希・・・。気配を消して近付かないでくれないか?心臓に悪い。」
「ごめんごめん。」
そう言いながら希までも上に登ってきた。
「軌翠さんは?」
希には軌翠さんを守るように言っていたから軌翠さんが一緒に居ない事が気になり、尋ねた。
「茜ちゃんなら保健室で寝てるよっ!寝不足なんだって。」
「なんだかんだでまだ、不安があるのだろうな。」
保健室なら准羅が居るから大丈夫か、と続けて、希に向けていた視線を手元に移した。
「徠歌?何してんのー?」
私がしていることが気になるのか、紙を覗き込んできた。
「これは芥川のトレーニングメニューだ。」
「芥川くんの?」
「あぁ。腕を怪我してテニスが出来ないからな。」
何で?とは聴いてこない希に感謝しながらメニューを考える。希はそんな私を見て複雑そうな顔をしていた。
「トレーニングって足の強化?」
どんなトレーニングを考えているのか興味があるのだろう、希はそんなことを聴いて来た。
「いや。足も必要だが、芥川はボレーを得意とするからな。握力強化と瞬発力の強化をさせようと思う。」
「ふーん。」
「良く分からないか。」
そう言って笑った。希はあまりスポーツを知らないからな。
「徠歌はテニスしたことあるの?」
「あぁ。昔にな。」
「うちもやりたいっ!」
言い出したら聴かない希が言ったことを無視して手を動かしていると希は肩を揺すってきた。
「わっ、分かった。今度の・・・休みに、行こうか。」
「やったーっ!」
テニスが出来ると聴いて喜んだ希を見て微笑んだ。
「ほら、そんなにはしゃいでいると落ちるぞ・・・」
私がそう言った矢先、希は給水塔の上から落ちた。それを見て、上から顔を出すと顔を歪めて床に倒れている希が見えた。
「いたたっ・・・」
「だから、言っただろ。・・・さっさと保健室に行って准羅に見て貰え。」
「はーい。」
希が屋上を出ていったことを確認するとまた、メニューを考えた。
希も案外ドジだな。なんて事を思った。