時間が立つのは早いものでもう、夕方になっていた。
「あっ!徠歌ちゃーん!?」
私がテニスコートに向かっていると後ろから呼ばれ、勢いよく抱きつかれた。
「・・・芥川・・・」
抱き付いて来たのが、芥川だと分かると苦笑いを漏らした。
「離れてくれ、あく・・・」
「ジロー。」
私の言葉を遮り、芥川が自分の名前を言った。なんかこのやり取り、前にも1度やったような・・・?そんなことを思いながら、溜息を吐いた。
「ジロー離れてくれ。」
そう言うと離れてくれた。離れたところでポケットの中に入れていた紙を取り出し、ジローに渡す。
「これ、トレーニングのメニューだ。治るまではこれをやってくれ。」
ジローは私の手の中にある紙を取って、開いた。
「A〜っ!こんなにやるのー?」
紙に書いてある量に驚いて目を開いている。
「ふふ。それを3日にかけてゆっくりで良いからやってくれ。」
「うー、分かったCー・・・」
項垂れているジローの頭を撫でテニスコートに向かい歩き出した。それに気付いたジローは慌てて後を追ってきた。
「くそくそくそっ!ジローっ!何でそんな奴と一緒にいんだよっ!?」
テニスコートにつくなり、向日が私達に突っかかってきた。
はぁ・・・またか・・・そう思わずにはいられない。何度言ってきたか分からない。
「退いてくれない?何処かの誰かさんの所為でジローが腕を怪我したからトレーニングする為の道具を取りに行かなくてはならないの。」
「クソクソ永藤っ!お前が美姫をイジメるのが1番の原因だろーがっ!何勝手に言ってんだよっ!」
殴りかかって来そうな向日と私の間に立つジロー。
「徠歌ちゃんに何かしたらいくら岳人でも許さないC−っ!」
「それはこっちも同じやで、ジロー。自分がそっちにつくんいうんならこっちも容赦せんで。」
私達の会話が聴こえて来たのだろう、忍足までもが会話に参加してきた。
「はぁ・・・。仲間までも殴ることが出来るなんて凄いね。貴方達の友情ってそんなものなんだーっ?まっ、仲間の言葉さえも信じないんだから友情もへったくれもないものねーっ。少しは素直に人の言葉を受け入れなよ。じゃないと痛い目、見るのは貴方達よ。」
それだけ言うと歩き出す。ジローを庇うようにして向日達の横を通り過ぎた。
「私は仕事があるから先行くけど。遅れないようにしなさいよ。」
後ろ手にひらひら振りながら、そこを後にした。
「なんだよっ、あいつ!」
「勘に障る奴やなぁ・・。だけど・・・
(あいつの言った言葉がやけに心の中に突き刺さる。何でや?)」
忍足はそんなことを考えていた。そんな相方には気付きもしないで向日は徠歌と芥川が行った方を睨みつけていた。