第7話

朝、廊下を歩いている途中、溜息が出た。昨夜、徠歌に言われたことが頭に蘇る。

「准羅と瑞希は新しく依頼された教師改革の方をやってくれ。榊さんの依頼は私と希でやる。」

その言葉を思い出してまた、溜息が洩れた。

「たくっ。どうやって変えろというんだよっ!」

「どうやって変えろというんですかっ!」

俺が呟いたのとほぼ同時に同じ事を呟いた瑞希と顔を見合わせ、笑いあった。

「教師改革って一体どーすりゃーいーんだよ?」

「私に訊かれても分かりませんよ・・・」

頭を掻きながら瑞希に訊くが、瑞希は苦笑いでそんな返答をすると足を止め、しかし・・・と言葉を続けた。

「依頼されたからには失敗は許されません。

まずは、教師達の意識を変えることから始めましょう。イジメなんて低レベルだと教えなくては。」

急に足を止められ、振り返る形で瑞希を見ては、ふっと笑い目を細める。

「そうだな。」

先行くぞー、とそう続けて止めていた足を動かした。

「あっ、待って下さいよ。」

そう言いながら小走りに歩いてくる瑞希を後ろ目に見て、職員室へ向かい歩いていく。職員室について中に入るとざわざわと騒がしかった。一体何事なのかと瑞希と目を合わせる。

「・・・何を騒いでんだ?」

「あっ、岩川先生に川元先生!今ですね。永藤さんをどうするのか、話し合っているんですよ。」

ああ、だから騒がしいのか・・・。

呆れた顔で質問に答えてくれた先生を見ていたら瑞希に脇腹を抓られた。

「何すんだよっ!」

「そんな顔しないでください。」

目の前に居る先生に聴こえないように小声で話す。そんな俺達を知ってか知らずかこの永藤をどうするか会議・・・略してエト会は続けられていた。

「今、どうなっているのですか?」

話が掴めずにいた瑞希は、まだ近くに居た先生に訊いた。

「どんな難問を出しても簡単に解くらしいんですよ。だから、どうやって永藤さんに躾をするかって話になっているのですが・・・

そこから、発展が無く進まない状態です。」

こいつの話を聴いていて呆れて何も言えなかった。それは瑞希も同じでぽかんと口を開けていた。その顔が可笑しくてククッと含み笑いをしているとまた、同じ場所を抓られた。

「まったく・・・馬鹿らしいですね。」

瑞希の呆れて呟いた言葉が聴こえたようで全員がこちらに振り返った。そして、1人の先生が瑞希に向って言い寄ってきた。

「なんだとっ?!イジメをしている奴を躾けるのが我々教師の仕事だぞっ!それを馬鹿らしいとはなんだっ?!」

「躾と仰っていますが、生徒に解けない難問を出して嘲笑うことの何が躾と仰るのですか?私にはイジメられているのは永藤さんにしか見えないのですが。」

瑞希に続いて俺もここに居る全員を見渡す。

「躾躾ってなんかの呪文みてぇに言ってっけどなぁ。躾して何になんだよっ!躾をする前にやることあんだろ?まずは、イジメを止めることが先決なんじゃねぇのか、あ?まぁ、イジメの原因を突き止めねぇと止めることも出来やしねぇんだろうがなっ!?」

「止めるにはまず、何が原因かを知ることが大事ですからね。」

俺と瑞希の言葉を聴いてうっと言葉に詰まるこいつ等。

「そ、そんなこと貴様等に言われる筋合いはないっ!」

頑固者なおっさんは、かぁっと頭に血が上ったらしく顔を真っ赤にして怒鳴り出した。

「俺達は思ったことを言ったまでだ。俺達の言葉の意味が分からないほどてめぇ等は腐ってねぇんだろ?だったら、何が正しいのか自分の頭で考えてみろよ?

まっ、てめぇ等がどう行動しようが俺には関係ねぇが、教師がこんな状態ならこの学園自体が腐っちまうぜ。このままで良いのかよ?」

それじゃーな。俺は仕事があっからよ。とそれだけ言うと職員室を去った。重く圧し掛かるような空気を残して―。

「つい、何も考えずに言っちまった・・・」

ははっと自称気味に呟いた声は誰にも聴かれることなく消えていった。

瑞希を残して来ちまったが・・・大丈夫か?後で偉い目にあうかもしんねぇな・・・。なんて瑞希への罪悪感を残して保健室に入った。

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