第2話私達は今、依頼の確認の為に依頼人・榊太郎が居る氷帝学園の正門の前に居る。
「ここが、氷帝学園かよ・・・」
「でかいねー。」
准羅と希が学校を見ての感想を言い、見上げていた。お金持ち学校と言われるだけのことはある。これだけ大きいのだ、驚くのが当り前か。
「さぁ、こんなとこで油を売っていても仕方ありません。行きましよ?」
瑞希の促しにより、私達は歩みを進めた。進めるうち、ボールを打つ音が聴こえてきた。
「見えてきたな。」
テニスコートが見えたことに嬉しさを表す希はいきなり走りだした。
「あっ、希っ!ずりぃぞっ!?」
それを見た准羅も走りだす。
「・・・まったく・・・。瑞希、あいつ等を頼む。私は榊さんと話してくる。」
「ええ。分かりました。」
テニスコートを見ても先生らしい人が見えなかった為、私は瑞希に希と准羅を頼んで、校舎内へ榊さんを探しに行くことにした。
何処だろ?普通は職員室に居るはずだけど・・・。とそんな事を考えながら校舎内に入ろうと歩いていると前方に先生らしき人がこちらへ歩いてくるのが見えた。私は、この人に訊いたら教えてくれるだろうと思い、話しかけることに。
「あのっ、お聞きしたいのですが・・・榊 太郎さんがどちらに居られるかご存じでしようか?」
そう尋ねるとその人は、足を止めて怪訝そうな顔をする。
「・・・榊は私だが。」
ちょうど良かった、と思い、口角を上げた私は榊さんを見据える。
「ご依頼ありがとうございます。
associatoの徠歌です。」
私の言葉を聴くなり、榊さんは驚いた顔を見せた。暫く沈黙が続く。どうせ、
associatoがこんなに若いとは思ってもみなかったんだろうな。と考えていた。そんな沈黙の中、やっと自我に帰った榊さんに向かって尋ねる。
「早速ですが、今回の依頼内容をお聞きしたいのですが、よろしいでしようか?」
「・・・・いや・・ここでは・・・・・」
そう言いながら周りをきょろきょろと見渡し始める。誰かに聞かれると不味いのか?と思い場所を変えるように言おうとした時だった。
「やめなさいっ!?」
「!?・・・すみません。ちょっと失礼します。」
一礼をしてから榊さんの元を離れる私は、瑞希の声がした方へ向って走った。その後を榊さんも追って走ってきている。
「男が大勢で1人の女をイジメてんじゃねぇよっ!」
続いて准羅の怒り声も聴こえてくる。一体何が起こっているのかは分からないが、多分・・・急いで止めないといけないだろう。あの2人が声に出して怒るなんて珍しい事だ。何時も冷静でいるから怒ることはあるが、表に出す事などあまりなかった。校舎の角を曲がると視界に入った現状を見て私は急いで走り寄り、男子生徒の襟元を掴んでいる准羅の腕を掴んだ。
「止めろ。」
キリッと睨んできた准羅に落ち着け、と言い聞かせるように見据え、掴んでいる手を放させる。
「お譲さん達、俺達はそこに居る奴に用事があるんや。そこに居られると邪魔なん、分かるやろ。」
先程まで掴まれていた所為で咳き込んでいる男子生徒の後ろに居た青髪の関西弁の男子生徒は希が後ろに隠している女生徒を顎で示す。
「用事って・・・また、イジメるんでしようっ!?」
「貴方達には関係ありませんっ!」
希が声を荒げて言うと長身の男子生徒が一歩前に出てきた。
「関係無い・・・?えぇ、確かに私達には関係ありません。しかし、男が大勢で女をイジメているところを見て黙ったままでいられるほど薄情ではありませんよっ!?」
今まで准羅のちょっと後ろで掌を握り締め、震わせていた瑞希がいつもとは違い、低い声を出した。瑞希の威圧感に押されたのか、誰1人として声を出す者はいない。辺りを見回してみるも誰も動こうとはしない。この状況に溜息を吐き、ここに居る男子生徒を見据える。
「何があったのかは知らないが、自分達がしていることが本当の意味で正しいのか、少し頭を冷やして考えてみると良い。イジメを受けている人間がどれ程苦しいのか、相手の気持ちになって考えろ。」
そこまで言うと踵を返し准羅、瑞希、希の順で見渡した。
「希はその子を。瑞希はあの方を。」
3人に目で合図を送ると分かった、と頷き希は女生徒を促し歩き出す。瑞希は近くの影に隠れている榊さんの元へ向かった。准羅は後ろを気にしながらも歩き、私もそれを見届け歩きだした。