あの場所から離れた所へ移動するといきなり女生徒が立ち止り、振り返った。

「あのっ!助けて頂きありがとうございますっ!」

そう言うなり、頭を下げてきた。

「気にしないで良いよー。」

「なぁ、何でイジメられてたんだ?」

すかさず希がフォローに入る。申し訳なさそうな顔をしながらも顔を上げる女生徒に准羅が疑問に思っていることを口にした。

「そっ・・それはー・・・・」

「それは・・・そこで隠れてついてきている人にでも話して貰いましようか?」

言い難そうにしている女生徒を見て、何かあると思った私は先程から隠れてついてきている人の方へと視線を向けた。そこに居る全員がそちらを見る。そこから泣き黒子が特徴の男子生徒が出てきた。

「・・・気付いていたのか?」

「あぁ。」

鋭い瞳を見せるこの人は一向に話そうとはしない。それを慌ただしく見ているのはイジメられていた女生徒だ。

「けっ・・景吾。この人達は悪い人たちじゃないよっ・・・」

「・・・茜・・・」

私と男子生徒の間に嫌な雰囲気が漂うと慌てて庇う女生徒。

「なぁ・・・話が見えねぇんだけど・・・」

「私もです。」

私の後ろでコソコソと話す准羅と瑞希に少し黙って、と目で訴える。こうしててもラチが明かないな、と思い溜息を吐いた。

「・・・まぁ良い。榊さんが話してくれますよね。」

黙って私達の会話を聴いてた榊さんに視線を投げると景吾と呼ばれた男子生徒が、榊監督っ?!と驚いていた。榊さんはここでは・・・、と呟き、ついてくるように促すと歩き出した。私は希達を見渡し、後をついてく。それを気にくわないとでも言いたそうな顔でついてきている男子生徒とその後を追う女子生徒。


――――・・・


校舎の奥にある音楽室についた。

「早速だが、聴かせて貰おうじゃねぇか。」

つくなり、准羅は早く話を聞きたいのか、急かすようにして榊さんを促した。だが、何故私達に話すのか分からない男子生徒は榊さんを睨みつけた。

「榊監督っ!何故こいつ等に話す必要があるんですかっ!」

「それは・・・この人達が我がテニス部の目を覚ましてくれるからだ。」

榊さんは遠くを見ている。まるで、見詰めている先に自分が望んでいるものがあるかのように。それを聴いた男子生徒は意味が分からない、といった顔をしている。

「徠歌。どうしますか?」

「そうだな・・・」

瑞希の問いかけに少し考えると私は榊さん達に向って話しかけた。

「榊さん。憶測でこれから話しますが、私達に依頼される内容とは、この女生徒を守ることですか?」

私は今までの話を聴いて考えたことを言ったら驚いた顔をした榊さんが目に入った。

「・・あーん?茜を守るだ?」

「それが依頼ならそーだよ。」

「依頼・・・?」

疑問に思ったことを聴いた男子生徒の質問に希が笑顔を向けて答えたのだが、また疑問が浮かんだみたいだ。その疑問を吹き消すかのように榊さんが口を開いた。

「いや・・・、軌翠キスイを守るだけではなく、テニス部の・・・否、氷帝学園の目を覚まして貰いたい。」

「?目を覚まさせる?どういう事だ?」

意味が分からないと頭に?マークを浮かべる准羅に視線を向けて話す榊さん。

「彼らは真実が分からず嘘を信じています。」

「あの人達を真実に導けば良いという事ですか?」

瑞希の言葉に頷き、私達に向かって大きく頭を下げた。

「頭をお上げください、榊さん。」

頭を上げた榊さんにニコッと笑いかける。

「ご依頼お請けいたします。」

「!?あっ、ありがとうございますっ!」

また、頭を下げる榊さんに苦笑いを浮かべる。

「ねぇねぇ、真実を教えるって、何を教えればいのー?」

素朴な疑問を希が榊さんに訊いた。榊さんは女生徒をチラっと見て目を伏せた。

「この軌翠がイジメられているのはもう1人のマネージャーをイジメたからだと言われています。」

ぽつりぽつり。小さい声だけど聴こえてくる。それは悔しいからなのだろう、唇を噛み締めながら話している。

「実際はもう1人のマネージャー・・・東條 美姫トウジョウ ミキが自分で傷を作って軌翠がやったなどと言って、軌翠を嵌めているのです。それを・・・・・」

「分かりました。それだけ聴ければ十分です。」

私は榊さんの話を遮り、それだけ言うと男子生徒の方に歩み寄った。

「軌翠さんの味方は貴方だけ?」

先程の話を聴いていて少しは警戒心を解いてくれたのだろう男子生徒はゆっくりと口を開いた。

「・・・いや、後樺地が居る。」

「・・・・2人だけか・・・。瑞希は情報収集を頼む。後は帰ってから話す。」

最初、ボソッと言い、皆にそう告げると榊さんに向き直った。

「明日から活動しますので私達のことはここに居る人以外には内密にお願いします。勿論、そこのお2人も。」

2人にニコッと笑いかけると分かってくれた。まだ、不服に思っているところもあるみたいだが、今はそんなことを気にしている暇はない。私達はここ・氷帝学園を後にした。

「榊監督。あいつ等は大丈夫なんですか?」

「あぁ。跡部、軌翠、私を彼女達を信じてくれ。」

「監督が言うんでしたら信じます。」

徠歌達が帰った後こういう話が行われていた。これから、何が起こり何を体験するのか。それは誰も知らない。

to be continued
10.12.16 up
20.10.09 修正
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