今日で終われば良いのだが、と無意識のうちに願っていた。
朝練中は何事も無く無事に終わった。嗚呼、変わったことがあるとすれば、チラチラこちらを向いては反らすという行為を繰り返していることぐらいだろ。
「跡部」
教室に向う途中、跡部を呼び止める。隣に居た忍足も跡部と一緒に振り向いてくれた。
「あーん?」
「今日で最後にしたい」
「?!そ、それって・・・」
「ふふ。ジロー達も集めてくれないか」
「あぁ」
それじゃ、と言ってその場を後にした。これで終わらせる。そう決意して。
屋上につくと涼しい風が私の頬を撫でた。んーと背伸びをし、フェンスの方へと歩く。
それから暫く、ぼんやり空を眺めているとギギーとドアが音を鳴らした。
「やはりここか」
「何処に居るんか探したんやで?」
跡部に続いて忍足が口を開くのに対し、私は軽く謝って跡部達に向き直った。
芥川や向日、樺地、軌翠さん、そして希が次々に屋上に来たのを確認し、給水タンクで出来た影の部分に腰掛け、タンクに背中を預ける。その様子を見ていた跡部達もそれぞれが私の近くに腰を下ろした。
「・・それで、どーやって終わらせるんだCー?」
あの時寝ていたから聴いていない芥川と今まで敵だった向日は知らないのか。めんどくさいな、と思いながらも口を開く。
「簡単なことだ。お前達に話し合いをして貰う」
「何処が簡単やねんっ?!」
「ほんとーにそれで上手くいくのー?」
流石関西人、なんて感心していると希が小さな声で話しかけてきた。ふっと小さく笑い皆に聴こえる大きさで言う。プレッシャーになるように。
「上手くいくかはいかないかはコイツらしだいだ。だが、昨日のドリンクで何かに気付いたみたいだからなぁ」
「まーた、何か企んでるでしよー?」
「さぁな」
ギャアギャア煩い希を放っておいて、頼んだぞ、と4人に言うと、あぁ、と良い返事が返ってきた。
「それで、軌翠さん。貴女はどうする?」
「どうするって・・?」
私が言っていることの意味が分からないというように訊いてきた。凄くすっとんきょんな顔になっている。だから、質問を変える。
「その話し合いに貴女も参加するか?」
「・・・はい。私も皆の役に立ちたい!だから・・・・私の言葉で分かってくれるんでしたら・・・」
「分かった」
強くなったな、と誰にも聴こえないように言ったつもりだが、希には聴こえていたらしく、だねっ、と返ってきた。
「・・・何で・・?何で、そこまでするんだよっ?お前、何も関わりねぇだろっ」
そんな中、1人だけがモヤモヤしていたことを弱々しく、訪ねてきた。向日は戸惑っているみたいだ。
「さぁ、何故だろうな」
「ふざ・・・・」
「ふざけないで答えよーよっ!徠歌っ!」
その言葉に笑いながら曖昧に答えると向日が怒る前に希に叱られてしまった。
「悪い悪い。・・・まぁ、簡単に言えば依頼されたからだ。貴方達の監督、榊さんに貴方達の目を覚まさせてくれ≠ニな」
「依頼・・?」
頭が混乱しているのだろう向日に向かって希が説明する。
「うちらは
associato≠チていう何でも屋をしてるのーっ!だから、今回は引き受けたんだよーん」
「だから・・・」
独り呟く言葉に希は首を傾げるが、ま、いっかといった感じで気にしなくなった。向日の顔が良い表情になったからだろうな。そう勝手に解釈した。