「バレても構わない。敵じゃないからな。ここでするか?他のところでするか?」
「良いのかよっ。・・・てか、どこでしたって同じだろっ?」
私の言葉に突っ込んでは頭を掻いた准羅。
「景吾。悪いが半分貸してくれないか?」
「あぁ。良いぜ。」
景吾に了承を得ると準備を始めた。景吾達にラケットを2本借り、握り方を教えて、ラリーをする。最初はあまり続かなかったモノのラリーをするにつれ上手くなっていく。
今は准羅と瑞希がラリーをしている。その隣で景吾とジローが打ち合っていた。半分での試合だろうか。希は軌翠さんと話している。そんな中、私は離れた場所で1人座って皆の様子を見ていた。暫く見ていると何かを決心したのか、そんな顔をした忍足が私に近付いて来た。
「・・・」
近くに来た忍足は何か言いたそうに口を開けたりしているが、中々声にしてくれない。そんな忍足に溜息をつき、見据えた。
「何?何か用?」
「えっ?!・・・あっいや・・・・・質問があるんやけど・・・ええか?」
最初は口籠っていたもののやっと決心がついたようでそう切り出して来た。
「まぁ、答えられることなら答えるよ。」
「・・・自分ら、一体何者なんや?」
私と忍足が話しているのに気付いた准羅達が私達の方に近付いて来た。そんな准羅達に、どうする?と目で合図すると頷いたから言って良いと解釈した。
「今は他の奴には教えないようにな。」
いつの間にか集まってきていたジロー達にも念を押し、うんっと頷いたことを確認する。
「私達は
associato≠ニいう何でも屋をしているんだ。」
「だから今回は茜を守ってくれているのか。榊監督の依頼で。」
納得だという顔をした景吾がそう呟いた。
「なんや、跡部達も知らんかったんやな。」
「何でも屋って何でもしてくれるのー?」
忍足のツッコミに続いてジローが首を傾げながら訊いて来た。
「あぁ。依頼があれば何でもやるが・・・しない時もある。」
内容次第でな、と付け足して言う私にまた疑問が浮かんできたらしいジロー。
「じゃ、今回は何で引き受けたのー?」
それは・・・と言って瑞希達を見る。するとその意図が分かったのか、瑞希が口を開いた。
「依頼内容を聴きに行ったあの日、忍足さん達が軌翠さんをイジメている所を見てしまいましたからね。・・・そういうこと私達、許せません。だから、貴方達の目を覚ます為に依頼を受けました。」
忍足の方を見ながら言った瑞希から忍足は目を背けていた。
「それさえなかったらバカバカしくて引き受けて無かっただろうがな。」
ははっと乾いた笑いを漏らす。そんな私とは変わってここには重い空気が流れた。
(こいつらが来んかったら俺は多分・・・気付くことが出来んかったやろ・・・)
最悪な出会いが彼らの運命を変えた。それが幸か不幸かはこれからの彼ら自身の心境にかかって来るだろう。
忍足は心の中でまだ、抱え込んでいた。そんなことを思い。悩み苦しむだろう。これから先も。その悩みが消えることはまだ、先のことだろう。
「そんなに暗くならないでよ。冗談だから。」
笑ってこの雰囲気を吹き飛ばそうとした私は立ち上がってラケットを持った。
「景吾、試合しない?」
コートに向かいながらそう尋ねると、あぁ、と言って景吾もコートに来た。それから2人は試合を開始した。