誰も触れられないストラップについて



「手塚のテニスバッグについてるストラップのこと、知りたいかい?」

ある日突然手塚のテニスバッグに付けられていた、作りは綺麗だが明らかに手作りなストラップ。「聞きたい、でも聞けない!」な状態で悶々としていた部員勢は、不二のその言葉にゼロコンマ一秒で食い付いた。「不二先輩、知ってるんスか?!」桃城は目を丸くしてそう聞くがそもそも、何を隠そう、不二は手塚に名前への告白を促した(焚きつけた)張本人なのである。でなければあの奥手な手塚が名前にあそこまで積極的に行動を起こすはずがない。

「詳しく話すのはどうかと思うけど、かと言って秘密のままだとみんな気になり過ぎて練習に集中できないみたいだから、少しだけ教えるよ」

「あれはね」不二はにこにこ顔で口を開く。桃城や一年三人組、傍らではリョーマや海堂までもがさりげなく聞き耳を立てている。青学男子テニス部をここまで混乱に陥れている例のストラップについて、手塚恋人できた説や手塚の趣味説などあれこれ邪推してきた部員たちだが、ついに今その秘密の片鱗が明かされるのだ。

「とある女の子から貰ったんだよ」

その女の子が恋人であるかということや経緯は伏せて、「手塚の趣味だって広めても面白かったかもしれないけどね」と不二は笑う。手塚が好きなのは可愛い猫のストラップではなくそのストラップを作った可愛い女の子の方である。「その女の子って恋人っスか?!青学?!」「秘密だよ、桃」「ええー!」わいわいと騒ぎはじめる部員たちにクスクス笑って、不二はリョーマに向き直った。彼が聞き耳を立てていたことに気付いていたのだ。

「どうでもいいって言ってた割には、越前も気になってたんだね」
「別に...」

実を言うとリョーマが気になっていたのは”手塚があんなに可愛いストラップを持っている理由”ではなく、ストラップそのものだった。こちらは正真正銘の猫好きなのである。正直めっちゃ欲しい。できればカルピンのデザインで。

「やっぱ手塚部長って恋人できたのか?!」
「やっぱりモテるんだなあ〜、手塚部長」
「(めっちゃ欲しい...)」

結局余計に悶々とする羽目になったテニス部員たちの思いをあざ笑うかのように、ころんとした可愛い猫は今日も手塚のテニスバックで揺れていた。

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -