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■□究極の選択!



色鮮やかな石がはめ込まれたピアス、ネックレス、それから、指輪。
ショーケースに入っているのは、漆黒の夜空に散りばめられた星々のような煌めきを放つアクセサリー。ただため息しか出てこない。

『レインはどれがいいんだ?』

顔をあげたら、胸に描かれた炎が目に飛び込んだ。

「ロディマス司令官!」
『レインに似合うのはどれかな』

うーん、と笑みを混じらせて、ロディマスはあたりまえのように並んで、かしゃりと音を立て肩を引き寄せられ、ショーケースを覗いた。

「あの…」
『毎日頑張っているんだ。何かご褒美をあげられたらと思っていた』

ロディマスを見上げたのと、彼が優しく微笑んだのは同じ瞬間だった。その落ち着いた笑みに、胸の中の何かが押しあがる。

『好きなのを選べ』

そう言うロディマスに少しはにかんで頷きながら、ショーケースに手をかけようとしたらいきなり、見当違いな場所から、別の声が聞こえて、

『日頃のご褒美、だと?いいだろうくれてやるわ』

ショーケースが爆発音とともに弾ける。ガルバトロンが撃ったのだ。ガラスの破片が飛び散って、反射的に目をつぶった。
破片がばらばら、しゃらしゃらと散る音がして、レインは吹き飛ばされた。起きあがろうとしていたら、目の前でロディマスが撃たれた。衝撃で彼も、レインとは反対方向へ吹き飛ばされる。

『ぬははははは、馬鹿めが』

呆気にとられ、そして恐怖で目を泳がせていると、ダークバイオレットのガルバトロンがゆっくりと近づいてくる。
殺される、と思ったその時に、

『…探したぞ、ワシのレインよ』

だなんて優しくいうものだから、

思わずきょとんとしたまま見上げていると、

『まったく世話の焼ける奴だわいお前は』

と言いながらすくい上げられて、帰るぞ、という。言われるがままガルバトロンのかたい手に掴まれていると、まさに、ちゅどん、という爆発音がして、そして彼の手のなかに衝撃が走る。

『オアァアァッ!!』

ガルバトロンがよろけ、胸から煙を出している。ひどいけがに思わず叫んだ。

「だ、大丈夫ですかガルバトロンさま!」

音を立ててはじかれるように地面にたたきつけられたガルバトロンを、転げながら見ていると、

『お前にレインは渡さない!ガルバトロン!』

背後から声。
復活したロディマスだ。
今度はロディマスにすくい上げれらた。

『さあ、思わぬ邪魔が入ったが仕切り直しだ。レイン、指輪を選ぼうじゃないか』

大きな手で掴み目線があう場所まで持ってきて、爽やかに微笑むサイバトロン司令官。だがこれで終わるわけもなく。

『ぬぉおぅ指輪だと!?誰が貴様から指輪など…』

ていっ、というガルバトロンの体当たりがしっかりヒットし、あっけなく倒れるロディマスの手中で、またもや転倒。端から見ればただ振り回されているだけのように見えるが、切り傷と打撲は増えてゆくばかりだ。

「う…う」

地味に痛い。

『貴様なんぞにレインを奪われてたまるか!!』
「あうっ」

今度は、ガルバトロンの手中。

『何を言うガルバトロン!お前にこそレインを奪う権利はないぞ!』
「ちょ、あうっ」

金属のぶつかり合う音が耳に痛い。だいたい、なぜふたりともこんなに自分にこだわっているのか。しかも不思議なことに、取っ組み合っている巨体たちに巻き込まれているものの、さっき受けた切り傷やら打撲やらがまったくといっていいほど痛くない。痛いつもりだったが、痛くない。
ん?痛くない?


『…ではそこまで言うのなら、レインに選んでもらおうじゃないか!それで文句はないかガルバトロン』
『いいだろう、貴様を選ぶとは思えんが…なぁ!』

ガルバトロンがロディマスをはじき飛ばした音とともに、地面にたたきつけられた。しかしやはり痛くはない。
カシャカシャと音を立てながら歩み寄る司令官と、破壊大帝の迫力ったらない。

『レイン、君は』
『ワシとこのロディマス、』
『どちらを…』
『『選ぶのだ?』』


どちらをって…
どちら…
ロディマス司令官も優しいしガルバトロンさまもかっこいい、

どちらかをなんて…
どちらかをなんて…




え、選ぶことなんてでけん!!!




「───はっ」

ばっちりと目覚めた体は、汗びっしょりだった。
部屋を見回すとまだ辺りは暗く、枕元の時計は真夜中の三時を差していた。

「…………」

むくりと起き上がって、ため息をひとつ。
何度かまばたきをしながら、息を整えた。
そうしていたら、
部屋の中で、声がした。



『──ん?起きたのか』


夜によく似合う声は、夢の中でも聞いた、尊敬してやまない、あの声。

「…ガルバトロン様…」

基地の中なのにこんなに静かなのはほかでもない、ここが誰も近づけないガルバトロンの部屋であるから。与えられた小さなベッドでは、時々ガルバトロンも気が向いたときに、同じ姿になって眠ってくれる。それは本当に至上の時なのだ。
けれど今は、ガルバトロンはベッドに入らずに、傍らでこちらをただながめている。篭の中の鳥を見るように。この時ばかりは、破壊を忘れているような目をしている。


『何の夢を見ておったのだ?』
「え?」
『かなり魘されとったぞ』


まさかあなたとロディマスに取り合いされて、あげく潰されそうになって逃げまどっておりました、とも言えず。

「な、なんの夢か忘れてしまいました」

困ったように笑顔を作ってみるものの、

『嘘をつけ!』

と、きつい口調でそう返され、起き抜けにも関わらず少し泣きそうになる。

『…………』
「…………」


まったく…、とぶつぶつ言いながら、結局ベッドにガバッと入ってきて、首の下に腕をまわされ、抱き込められすっぽりと、胸の中におさまった。


『お前はワシだけの事を考えておればよいのだ』

髪がふれる指は優しくて、破壊大帝なんて言葉は、嘘みたい、といつも思う。
そんな心地よさに、思わず目を閉じた。



究極の選択
『…ワシ以外の夢でも観ようものなら…、この場で処刑してくれるわむにゃむにゃ…』
(言えない!口が裂けても言えない…!)


目を閉じてもあなたを感じる、幸せ。
2009/11/28
エツさまへ!