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■シークレットラグーン

今日も新たな資源の調査を命じられ、基地の入口へと向かう。ひとりで車を走らせるのが好きだ。風をきって、空を仰いで。

さぁ!トランスフォームして出かけるぞ!

…というところで、基地の中から叫ぶ声がした。
「ビーーチコンバーー!!待ってーーー!!」
『?』
駆けてきたのは小さな補修員の彼女だった。
『どうしたんだ?』
「ビーチコンッ…つうしっ…モジュッ…緩んっ…しんぱ……だっ…はぁはぁ、ちょ、待って!!」
ぜぇぜぇ息を切らして、少し汗ばんだ額が日差しで光っている。
両膝に腕をついて息を整えている彼女が落ちつくのを待った。

『大丈夫かい?』
「はぁ…はぁ、もうっ、この基地私には広すぎていやだ!!」
…本当に嫌そうだ。
『基地が広いのは我々が君たちより大きいから仕方がないが、君たちが耐えずその呼吸という作業をやらなくてはならないのは辛そうだね』
「私運動不足だよね、絶対。ふう。とにかく走ってる時や探索中にケガとかして、もし通信機能が故障でもしてリペアできなくなったらまずいでしょ、だから今日は私ついて行ってもいい?」
独特の話し方に戸惑いながらも読解回路をフル稼動し、答える。
『あぁ、かまわないよ』
「邪魔されたくない?」
彼女が笑った。
『なぜそんな発想に至るんだい?かまわないといってるのに』
「ビーチコンバーは1人が好きそうだから。お邪魔かなって」
『いいや仲間は多い方がいい。さぁ乗って』
彼女が助手席に乗り込むと、温もりが伝わってくる。

「あ、ビーチコンバーあったかい」
『…君も同じように温かいが』

レインが笑うと、なぜかスパークが疼く。いつもそうだ。

「しゅっぱーぁつ!」

レインの声とともにエンジンを噴かす。なぜか気分がよかった。
彼女といると、「たとえようがない」気持ちに何度も陥る。
そのどれもがスパークを刺激する。

「ビーチコンバー」
『なんだい?』
「今日はどこに行くの?」
『あぁ、ここから46キロほど先に湖があって、そこに少し変わったエネルギー反応があったんだよ』

日差しを仰いだレインが頷いた。

「今までエネルギー探索しててどこが一番すごかった?」
『ああ…そうだな…ゴールデンラグーンのあった所かな』
「ゴールデン?」
『…だがもうその場所は無くなってしまった』
「あ…そうなんだ?」
『たくさん動物達もいたから汚したくなかったのに、それは叶わなかった』
「そっか」

珍しくそれきり、レインは詳しく聞いてこなかった。
『なんだか暗い話をしてしまったね』
「ううん、大丈夫だよ。これから行くところ、楽しみだね」

彼女の笑顔は優しい。どうしたら無条件にあんな表情を作れるんだろう。

『ああ』

湖には思ったよりも早く辿り着いた。途中で話をしてくれる彼女がいたから、そんな風に感じたのかもしれない。
降りて湖の方へ駆け出したレインが、今までに聞いたことのないような声をあげる。

「すごい!!見て!!!」

トランスフォームして追いかけると…着くなり、いきなりレインが足元に抱きついてきた。
スパークが早鐘を打つように、また疼き、熱くなる。

『ど、どうしたんだ?』

どうしても戸惑いを隠せずに、思わず大きな声が出てしまった。

「すごいよここ!!ピンクだよ!!すごい!!可愛い!」
『湖がピンク色なのはこの星では珍しい事なのかい?』
「珍しいよ!!入浴剤でしか見たことないもん」
『そ、そうか。じゃあ早速水質を調べることにしよう』
「あ、うん。その辺見てていい?」
『かまわないよ』

そう言うなり、レインは湖に向かってカメラを向けた。湖を撮っているようだ。
『…レイン』
「ん?」
『間違っても、ブログに載せたりしちゃだめだよ』
「え!私今それしようとしてた…」
『わかるが、ダメだ。デストロンに知れたら?』
「あ…そっか。うん、ごめん」

肩を落とし小さくなってカメラをバッグにしまう彼女を、傷つけてしまったかと心配になる。

でもすぐ彼女は何かを思いついたかのように屈託なく笑い、話しかけてくる。

「じゃあ、ここ。今私たちだけの秘密の場所だね!」
『秘密?自分達だけの?』
「うん、そう!」

にこにこ笑う彼女を、本当に言いようのない、満たされたような、でもまだ歯がゆいような、そんな気持ちで眺める。
湖から受ける風を、気持ち良さそうにあびるレインの横に腰掛けてみる。
『また、ここに連れ出しても、いいかい?』
「もちろん、またドライブ一緒に行こう」

ああ、ずっと、このままでいて欲しい。彼女が永遠にここで笑ってくれたらいいのに、と思う。

「たまには2人も、いいもんでしょう?」
『ああ、そうだな』

もう、無くさない。
此処だけは。
この場所だけは。
此処と彼女を守る為なら、何でもしたい、そう思った。

2008/11ー