★あなたといっしょに住みたいよ(メガトロン様編/実)
朝6時。
びっくりして跳ね起きた。
轟々と滝のような音が聞こえる。
「あ、雨にしては…」
豪雨を連想させる音がこだまする。とても怖い。
しかしカーテンを開けると、
「あれー!?」
雨のあの字もないほど晴天で、もうすぐあたたかい日が昇りそうである。
「……へんだなぁ」
よく耳を澄ますと、轟音はどうも浴室から聞こえてようである。
「ん?お風呂?」
寝ぼけ眼で髪もボサボサ、ベッドから体を起こすと、よれているズボンが目に入り萎える。眠い…
しかし浴室からということは水が出ているということだ。これはただ事ではない!走って浴室へ向かう。浴室のドアの隙間から尋常ではない湯気が立ち込め、脱衣所の湿度が飽和しそうだ!
「!なに!?!?」
ドアを開けると、
『七十億の中の一匹か』
蒸気でまったく見えないが、ヒューマノイドのメガトロンの声である。
「…こ、これなん…」
『朝風呂だ』
「だ、出し過ぎですよ!」
換気扇のスイッチを入れ蒸気をかき分けると、ほんの少しだけ銀色の髪が見えた。あとはシルエットだけで、とにかく脱衣所まで熱い。
『地球の資源は俺のものだ、使って何が悪い』
「でも私の口座から使った分が落ちるんですよ!止めるか出す量を少なくして!」
『朝風呂、なかなかいいな』
「って聞いてます!?」
蒸気が薄くなってきた。
その姿を視界に捉えることができてきた。
「!」
閣下、すっぽんぽんである!
『このシャワーが気に入った』
「…だっ、だから水道代が…」
『なんだその寝癖は…来い』
「えっ!」
ぐい、と温かくてごつごつとした手で引き寄せられ、パジャマごとずぶ濡れになる。
「…あの…ず、ずぶ濡れに…」
『寝坊助め』
「蛇口、止めないと…」
蒸気で息が詰まる。
口を塞がれて余計に息が詰まる。唇が離れると開口一番、
『…寝癖が直ったな。感謝しろ』
真紅の双眸がぼやけている。残りの蒸気で。
『朝風呂、気に入った。明日から我が家の日課にするぞ、七十億の中の一匹』
…あなたと住むと、破産します。そんな同棲、1日目。