実写/ジャズ | ナノ
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I Love You.

選択



降り出した夜の雨は、いつかの真夜中を思い出させた。ジャズの名前を呼びながら泣いていた。iPodも携帯も、濡れないようにバッグに入れた。もう会えないのかと何度も思った。会いたかった。
今なら言える気がする。彼の想いに応えることが出来るはず。
そばにいられればいいという、どこかに置いてきた純粋な想いを、取り戻せる気がした。

「…ジャズ…」

人目を憚ることなく泣いていたら、後方で声がした。

『凍え死にてえのか』

くるりと振り返ると、そこには銀髪の男性が立っていた。

絡まれる、と思い逃げるように走り出す。

『あ、おい、待て!俺だ』

知らない、今そんな気分じゃないし、何より今はジャズが、──
と思ったところで、聞き覚えのある声だと思った。思わず背を向けたまま立ち止まった。

『はぁ…お前、頭悪いだろ?』

それはあまりにも失礼だ。

「…………」

なんだか、これもいつだったか思った気がする。
恐る恐る、振り返ってみる。
銀髪にバイザー、見覚えのある、腕を組んだ立ち方。夜の闇であまり見えないけれど、ニヤリと笑った気がした。

「…ジャズ」
『おう、』
「…なん、に、人間みたい」
『だから言っただろう、俺は魔法使いだってな』

二人の間は、およそ3メートル。
ゆっくりとお互いに近づいた。手が届くところまでたどり着いた時、どちらともなく抱き合う。

『…やっぱり誰かと一緒にいるお前を考えたくなかった』

わんわん泣く子供のようなユマに、ジャズは思わず苦笑した。

『お前は俺がいないとダメだな』

胸のあたりでうずくまって頷いているユマの頬に触れた。
この姿だから出来る。

『ラチェットに感謝だな』
「?」

見上げてくる瞳に、きりと口を結んだ。

『ユマ、これは選択肢としては険しいぞ。先に言っておく』
「え?」
『俺はお前とは寿命も体の構造も違う』
「………」
『お前が…』

ユマが背伸びをして、ジャズの頬を両手で包んで、短いキスをした。ゆっくりと額を寄せ合う。

『………』
「一緒にいてくれる?」

ぽろぽろ流す涙は、一体どっから精製されるんだろう。そう思いながら、髪をゆっくり束ねて背中に持っていった。顔がよく見えるように。

『ああ、ばーさんになっても居てやるよ』

柔らかくユマが笑う。

『そのかわり』
「?」

くっついた額から温かさを感じる。心地いい。

『生まれ変わっても俺のもとに来いよ、待ってるから』
「………」
『最新のヒット曲を聞かせてやる』

またユマが笑う。

「見つけてくれるんでしょ?」
『?』
「得意なんでしょ?見つからないもの、ないんでしょ?」

じゃあ見つけて、私はその能力がないから、
と言われた。泣きながら、言われた。
俺はお前が泣く顔を見ると、何もかもを、
生きてきた時間をも、全部捨てたくなる。

『わかった、頼むから泣くな』
「泣かせたのはそっちだよ!ジャズスペシャルはズルいよ!」
『お前あれ読んだのか』
「う……」
『………』
「………」

見つめ合って、それから、どちらともなくもう一度キスをした。唇を離した後、ジャズが呟いた。

『……で、答えは出たのか』
「…………」

バイザーを、ゆっくり取った。
目は、アクアブルー。
想像した通りの色。涼しい視線。けれど今は眦が下がって、弱々しいな目をしている。不安そうな目。そんな表情、するんだね。

「……他に答えがないよ」

俺たちに
ともに果てる未来がなくても
愛し合うことを止めることができない
孤独に囲まれたこの一人でいるには
広すぎる星で
どうか お許しください
それがたった 100年に満たない
短い時間でも