もしもbygone daysの夢主と土方が天敵関係にあったら


「あ、」
「…あ、」

天気の良い日曜日。

久しぶりに平和なオフを私はめちゃめちゃ満喫していた。

ジェラート屋さんに寄ってお気に入りのジェラートを食べたり、初めて入る雑貨屋さんに行ってみたり。

そんなこんなで現在、三つ目に寄ったフルーツジュース屋で買ったバナナスムージーを飲みながらいつもの洋服屋に向かっているところだったのに。

(…まさか、こんなところで出会うとは)

「誰かと思えば多串くんじゃ〜ん。銀時の言うとおり、暇そうだねオタク。警察はいいよね〜、税金から給料出るんでしょ羨ましいなぁ。ま、一般市民は地を這うように落ちた金でも探しながら今日の晩御飯を食い繋いでいきますよ。それじゃっ!」
「待てやコラァ!テメー言い逃げか!相変わらずムカつく女だなオイ!あからさますぎんだろーが!つーか今更だけど聞いていい?やっぱりお前俺のこと嫌いなの?」

ガシィ!とまるでどこかの漫画の効果音ばりの勢いで掴まれた着物の襟首。

くっ首がしまってるんですけどォ!嫌いなのっておまっ…こっちが聞きたいわァ!あんたこそ私のこと嫌いだろ?殺したいくらい憎んでるんだろォォ!?

あわよくばこのまま逝かす勢いだろーがオイィィイ!!

「っまっマジで、死ぬ…!」
「あ、悪ィ」
「っは、ゴホッゴホッ!…ってめ、許すかァァ!危うく昇天するとこだったわァァ!」
「だから悪かったっつってんだろ。んな怒んなよ」

ポンと頭に置かれた手を振り払う。

馴れ馴れしいにも程があるんじゃなくて?本当にやめてくれる?そういうの。そんなことで機嫌直すような軽い女じゃないんですけど。

ていうかなにその謝り方マジ軽くない?すれ違いざまに肩が当たったときの“あ、わり”くらい軽くない?

ほんと腹が立つ…とりあえず今すぐあんみつ奢れよ土方コラァ。あ、違った多串だった。

「オイィィ!なんか思いっきり聞こえちゃってんだけど心の声めっちゃ漏れてんだけどォォ!」
「テンション高いなァ、疲れないのアンタ?」
「疲れるわァァア!現在進行形で疲れるわ!もう本当なんなのお前!」

“つーかお前…俺の名前多串じゃねーから”とだいぶ遅いツッコミを頂きました。知ってるわ。わざとだよわざと。

疲れきった様子でそう呟いた多串くんにへらりと笑って近くにあったファミレスを指差す。

彼はこう見えて実は結構良い人だと思う。なんだかんだ結局首を縦に振ってくれるし、このまま昼食&デザートまで奢ってくれるという。

うわお、太っ腹だね君は!いいよいいよ!あんみつはまたの機会でね!また奢ってくれよな!キリッ!

「いやキリッ!じゃねェよ!まだ首を縦に振ってないんだけど!溜息付いただけなんだけどォ!つーか何で俺がテメーなんかに奢らにゃならねーんだよざけんな」
「…ぐすっ、トシくん、私お腹すいたよォ」
「ほんと調子良いなお前」

はぁ、ともう一度溜息を吐いた後“なんでも頼みやがれチクショー”と呟いて彼は先に歩いていく。その手には私が今まで肩に掛けていたサマンサダバサンの鞄。

…どうやら持ってくれるらしい。

なんて良い心がけだろうか。この人地味にモテそぉ、地味にな。とか思ったのは秘密である。

「…全部声に出てるから。秘密であるって全然秘密になってないから。何それワザと?」
「まぁね」
「オイ」

なんともくだらないこんなやり取りも楽しいと感じる今日この頃。

私が笑えば多串くんも仕方無さそうに笑う。そうしてまた、くだらないやり取りをしながら私たちはファミレスに向かうのだ。

ああ、なんだかんだ言いながら私は彼が気に入っているらしい。

(もしも、のお話)

end

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