白いシーツの上で、銀ちゃんからの懐かしい愛撫を受けていた。

額に頬に唇に、降ってくるその甘いキス。私を見下ろすその赤い瞳に吸い込まれそうになりながら目を閉じる。

身体中を這い回るのは温かい彼の手。その手を感じながら手を伸ばせば柔らかな髪の毛に触れて。

私の耳元で好きだ、と何度も呟く銀ちゃんの声。

どうしてかな、涙が溢れて止まらない。

目の前がゆらゆら、揺れる中で見えたのは銀ちゃんの目から零れる涙。…ああ、銀ちゃんが泣いてるからか、って。

「…ナマエ、」
「ぎん、ちゃ…っ」

ポタポタ。涙なのか、汗なのか。銀ちゃんから止めどなく降ってくる雫が頬に落ちていく。濡れたその目元に手を伸ばせば見たことないような顔で笑うから私も切なくなって。

…でもさ、私たち、何をしてるんだろうね。

別れているのに…こうして今体を重ねてる。私に至っては、味方だと言ってくれたトシを裏切ってここにいる。…最低だ。本当に最低な女だ。

トシ…ごめんなさい。こんな私を許さないで。アバズレだって罵って。ごめんね。ごめんなさい。

…でも私、突き放せない。銀ちゃんを突き放せないよ。辛そうな顔して私を求める銀ちゃんを。

「ナマエ…っは、好き、っ好きだっ!」
「っあ!あぁ!っは、ぁ、銀、ちゃん…っ!」
「…っナマエ、」

…久しぶりの、銀ちゃんとの行為は。何故かあの頃を思い出させる。お互い好き合って、一緒にいるだけで幸せで。キスが落ちてくる度にきゅんと胸が高鳴って。

そうだ、そうだった。私はあんなにも幸せだったのにって、あんなにも大好きだったのにって。今頃そんなことに気付いたって無駄なのに。

…止まらないの。気持ちが、溢れてくるから。

「…っうあ、っぎん、ちゃっ待っ…ああ!」
「 っぁ、ナマエ…?」
「す、き…!銀ちゃっ…!」
「!!」

今日だけは、今だけは…言ってもいいかな。好きだって。銀ちゃんのことが好きだって。

「…ナマエっ、!」

苦しくなるくらい切ない声で名前を呼んで、銀ちゃんの手が私の頬に伸びる。逃げられないように引き寄せられて落とされる噛み付くような荒々しいキス。

「っはぁ、ぎん…っちゃ、あっ!」

そのキスに溺れて、銀ちゃんにも溺れて。何度も何度も激しく打ち付けてくる彼に応えるように私は何度も何度も好きだと繰り返した。

熱い手が、唇が、身体が。全てが銀ちゃんを求めてる。

好きだよ。銀ちゃん。これから先もずっと…ずっとね、大好きだから。

だからこれが最後、とは口には出さずに。

温かいこの身体に寄り添って眠れる最後の夜。私の身体を引き寄せて、幸せそうに眠る銀ちゃんに触れるだけのキスをする。

ごめんね、銀ちゃん…ごめんなさい。

小さく謝った声が、震えていたことを知るのは私だけ。

(さようなら、大好きな人)

end




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