samurai7 | ナノ
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「……さん、ユメカさん起きて」


体を少し揺すられ、ユメカは目を覚ました。
まだ眠いと思いながら、いつの間に自分は寝てしまったのかと記憶を辿る。
するとついさっきまで、ユキノとキララと一緒に
いろいろな着物に着替えたり、お化粧をしたりと楽しんでいたのを思い出した。
ぼんやりする頭に片手を当て、ユメカは上体を起こす。
いつの間にか被せられていた掛け布団が、くしゃりと音をたてた。


「ユメカさん、外に追っ手がいるみたいなの。
皆のところに行きましょう」
「え…っ!?」


ユキノの言葉に、ユメカは一気に目が覚めた。
驚いて顔を上げれば、準備が既に整い
いつもの赤と青が特徴的な服装に身を包んだキララが視界に入る。
一方自分はユキノに着せてもらった、裾が膝丈までの着物姿のままだ。
若い踊り子さんの衣装だというそれは、
艶やかな薄紅色が、胴に行くにかけて白へと段階的になっていて
大きく描かれた牡丹が、優美で特徴的だった。
ユメカが寝てしまったせいで、皺になっていたが。


「あ…!ごめんなさい!今すぐ着替えて」
「時間が無いわ。そのお着物は貴女にあげるから」
「でも!」
「さ、早く」


ユキノが荷物を渡し、半ば強引にユメカの腕を引き皆が寝ている隣部屋に向かう。


「外に追っ手が!」


休息をとっていたサムライ達はユキノの言葉に直ぐに反応を示した。
「どこで見付かりましたかな」というゴロベエに、
「見られておらぬはずだが」と、疑問を口にするヘイハチ。
そんな中落ち着き払ったカンベエは「それもまた戦だ」と諭した。
すると皆の耳に、少し離れた場所からコマチが待ち望んでいた野太い声が届く。


「なんだぁお前らァ」
「サムライ狩りだ。神妙にせい」
「おお!お目が高い!俺の家系図見るかぁ?」


「んぁ!おっちゃまぁ!?」


寝入っていたコマチも飛び起きる。
どうやら時間差があるが、アニメと同じ流れを辿っているらしい。
ずっとこれからどうなるのかと心配だったユメカは少し安心し、
コマチの様子を見てほっと安堵の息を漏らした。


一同が声のする障子の外に注目していると、赤い機械が部屋を飛び出し騒々しく一行のいる部屋に向かってくる。
紛れもなく仲間であるキクチヨは、障子を破壊しながら騒動に巻き込むように飛び込んだ。
キクチヨが顔を上げて周りの様子を確かめ、軽い調子で声を上げる。


「や!こんな所に居やがったでござるか!
なんだなんだ!暗いぞ暗いぞ!
だが安心しな。この俺が来たからには、だいじょーぶでござる!」
「だいじょーぶでござるぅ!」


コマチは喜んで拳を握りながらキクチヨの言葉を反復し、
騒動を呼んだのはキクチヨだといわんばかりに皆は呆れる。
疫病神だと冗談で罵りつつも、よくぞ無事戻ってきたという歓迎の雰囲気がそこにあった。


しかし。


「ユメカくんみーっけ!」


そう言われた時には、ユメカの上半身に軽い衝撃。
気付けば背後からウキョウの腕にしっかりと抱え込まれていた。
驚いて抜け出そうとするが、思った以上に力は強く抜け出せない。
しまった…!と、自分の立ち位置を見て後悔する。
ユメカは障子に近い位置に外に背を向けて立っていた。


「ユメカくんってカンベエくん達の仲間だったんだ。
どうりで見つからないはずだよね〜」


「ユメカ殿!」


カツシロウが前に出ようとしたのを、テッサイが目の前に威圧的に立ったことで阻んだ。


両者が睨み合う。


一体これからどうすればいいだろう。
自分のせいで足止めをくらったり、ましてや皆がウキョウ達に捕まってしまってはいけない。
ユメカが周りの様子を確かめるように視線だけで横を見れば、
キュウゾウにヒョーゴ、ボウガンの姿を捉えた。


味方ではない立場にいるが、決して敵とは言えない人達。
ユメカはそう思うとぐっと意思を固め、冷静な判断を一番下せそうなカンベエに視線を送った。
直ぐに、視線は合う。


自分は大丈夫。と意味を込めて頷いた。
そして口を開く。声を出さなくても伝わるように、短い言葉を選ぶ。


『行って』


カンベエが視線を外し「シチ、戦だ」と声を掛ける。
シチロージが少し目を見開くが
直ぐに頷きを返し、余裕を感じられる笑みを浮かべた。


「ええ、久しぶりの。
ですが皆々様、此処は癒しの里。切った張ったはご遠慮願いたいもんで」
「お主、中々の腕と見た」


ヒョーゴがにやりと笑み、刀に手を掛ける。
その様子に「刀はご法度なんだって」とゴロベエが返すが、問答無用とばかりに刀を振りかざす。
強行的に止めるためゴロベエは灯台を手にし、いつのまに口内に仕掛けをしていたのか、息を吹きかけることで火を噴いた。


「あちち!」


火の勢いにヒョーゴは一瞬飛びのくが、それが戦いの始まりの合図となったかのように
テッサイも脇差を抜き、応戦する。


ゴロベエが後ろに下がり、皆が同じ場所に集まった時。
シチロージが機械の手で畳に触れた。


「秘儀、畳反し」


次々に周りの畳がシチロージの手によって立てられ、皆の姿が見えなくなる。
どう出るのかとウキョウ側は怯んだ。
その隙に皆は、抜け道の水路を抜けて式杜人の里に向かうはずだ。
自分は後でどうにかして追いつけばいい。


ユメカの意志をカンベエは確実に理解し、皆を納得させたのだろう。
テッサイが先手を打とうと畳を倒したときには、
アニメの通り誰一人として残ってはいなかった。

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