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部屋にひとりになったユメカは、すぐにベッドから跳び下り扉に近付いた。どのような仕組みで開くのか、ウキョウとテッサイの出ていった扉は触ってみてもびくともしない。どこかから脱出できないかと周りを見回すが、そんな箇所をウキョウが残しているはずもなく、窓も通気孔も見当たらなかった。
(今頃、皆どうしてるだろう……)
カツシロウは村に行ってくれただろうか、ゴロベエはどうしただろうか、皆は此処に向かう準備をしているだろうか、それとももう着く頃だろうか。気になることは沢山あり、溜息を落とす。
(ウキョウはああ言ってたけど、ボウガンは……)
考えても埒が明かないが、考えずにはいられない。邪魔者は消す、つまり用済みになれば自分も消されるだろう。このままじっとしていては駄目だと焦り、部屋の中を念入りに探り始めた。
どれくらい時間が経っただろうか。結局部屋から脱出できる手段は見付からず、ユメカは椅子に腰掛け、少しでも情報を得ようと耳を澄ましていた。ほんの僅か、部屋の前を人が通れば足音が聞こえるのだ。しかし、この通りを通る人は限られているらしく物音は殆どしなかった。扉を越えれば見張りは居ない。しかし扉を越える手段が無い。
(誰か、来る……)
足音に気付き、集中する。すると足音は部屋の前で止まった。
(ウキョウ?……でも、ひとりじゃ来ないよね)
いつもテッサイを必ず従えている。ならば誰なのだろう。怪訝に見つめていた扉は開き、食事を抱えたカムロが入ってきた。カムロが入れば扉はすぐに閉まり、逃げる隙間は無かった。
「食事です」
「……あの、これは晩ご飯ですか?」
時刻を知りたくて自然に確認すれば、カムロは頷いた。
「はい。食事なさって、此処で待っていてくださいユメカさん」
名を呼ばれたことに驚き、カムロをまじまじと見る。そしてはっと目を見開いた。
「ロクタ……?」
「覚えていてくれたんですね」
はにかむように笑った小柄なカムロは、声を潜めて言葉を続けた。
「ボウガン殿が時機を見て助けに来る手筈になっていますので、安心してください」
「じゃあ、やっぱりボウガンも捕まって…?」
「はい、最下部の牢に入れられてますが、僕が見張りになる時があるので抜け出せるんです」
ボウガンが生きていたことが嬉しく胸が弾む。しかしその後を思い眉をひそめた。
「でも、ロクタはその後どうするの?こっちに協力して大丈夫?」
「良いんですよ。僕は僕のしたいようにしているんです。じゃあ、失礼しますね。あまり長居すると怪しいので」
「あ、うん。本当にありがとう……!」
ロクタはにこりと微笑み、部屋を出ていった。
立場が違うのに、協力してくれる人は現れる。なのに何故ウキョウの行動は変わらないのか。
ユメカは気持ちを切り替えるように自分の両頬を叩いた。今から夜という事は、早朝にはカンベエ達皆が都に乗り込んでくる可能性があるからだ。
ついに、この時が来たのだ。夢に見た状況とは違い、仲間の数も変わっている。
不安はあるが、戦う意思は固まっていた。
皆で一緒に帰るために。
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11.07.19 tokika