samurai7 | ナノ
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村人達が一斉に弓を構える。しかしそれをカンベエが制した。


「お前達は引け!」


その間にキクチヨが刀を手に雷電に斬りかかろうとしたのだが、それさえも止める声が響き渡った。


「キクチヨ様!どいてけろ!」


振り向いたキクチヨが「まじかよ!」と驚きの声を上げる。何故ならリキチ達村人が身の丈以上もある巨大な鉄砲を数人がかりで持ち、雷電に銃口を向けていたからだ。


「貴様ら……!」


雷電が銃を向けるよりも早く、リキチは引き金を引いた。途端に弾は発射されたが反動で銃が跳びあがり、支えていた者達全員を跳ね飛ばしてしまう。
結局銃弾も軌道を反れ、雷電では無く遥か上空へと向かっていった。その様子に雷電は笑いを起こした。


「農民ごときが鉄砲を使えてたまるか。殺れ!」


雷電の下で控えていた無数の野伏せり達が駆け出す。それに伴い、サムライも野伏せりに向かっていった。
その様子をじっと息を殺してユメカが見つめていると、キュウゾウの姿も確認できた。どうやら此処にサムライ達が集結しつつある。そろそろだ。


キュウゾウが次々とミミズクとヤカンを斬り捨てていくため、雷電は特に目障りなキュウゾウへと銃口を向ける。素早い動きに焦点が定まらず翻弄されていた時、カツシロウが雷電の死角から跳びあがり、その胴をぶった斬った。


体をふたつに分断された雷電は、断末魔を上げる隙もなく泥しぶきを上げ地に伏せた。
初めて巨大な機械のサムライを斬った。カツシロウはその背に立ち、燃え滾る感覚と冷静に斬ることが出来た自分を感じていた。するとヤカン達と斬り結んでいたカンベエが声を上げた。


「カツシロウ、油断するな!」
「はい!」


カツシロウが泥にまみれた雷電の身から着地すれば、先程銃を扱った者達が視界の隅でリキチに肩を貸しているのが目に付き傍へと駆け寄った。


「リキチ殿」
「行ってけろ」
「だが……」


苦痛に表情を歪めるリキチを見てカツシロウが渋れば、肩を貸していたモスケが口を開いた。


「あばらが折れたみてぇだ」


カツシロウが眉を寄せた。引き金を引いたリキチは鉄砲の反動を胸でまともに受けてしまったのだ。あばらだけで済んだのは幸運と思うべきだろう。打ち所が悪ければ死に至る。


「リキチ殿、生きて女房に逢うのであろう。命を粗末にするな」


リキチが目を細め、小さく頷いた。続いてカツシロウはキララのもとへ連れていくようモスケに指示を出した。
雷電が引き連れた野伏せりをサムライが全て骸にした頃、夜が明けたのか辺りがぼんやりと明るく、覆われた厚い雨雲は灰色へと変化していた。
残るは野伏せりの頭である、紅蜘蛛――シュウサイのみ。どこから来るかと気を張り詰めていた時、小屋の陰からヘイハチがこちらへ向かってくる姿を皆が捉えた。


「ヘイさん!その怪我は……」


一番に駆け寄ったシチロージに、ヘイハチは包帯を巻いた腹をさすり、目元のゴーグルを普段の位置である額へとずらし苦笑した。


「っ米が……食いたい」


気の抜けた言葉を言う余裕が少なからずあることが分かったシチロージは安心し「まったく」と言葉を返した。
その時、どこからともなく銃弾が降り注いだ。皆がそれを避け、銃弾が向かってきた方角を計り距離を取る。一瞬の静寂の後、ついに紅蜘蛛が姿を現した。


それはユメカの視界にもしっかりと入ってきた。その名の通り、威厳さえも感じられる赤い装甲。恐怖と緊張から体中の血が逆流するかのような錯覚と、自分のものではなくなったかのように暴れる心臓。
落ち着けようとする意思から胸元の服をきつく掴んだ。すると無意識に一緒に掴んだ石のひんやりとした感触が、徐々に冷静さを与えてくれる。


――口を挟むタイミングを誤ったら駄目だ。誤れば、他のサムライの身を危険に晒すことになる。


ユメカはそう思うと、いつでも飛び出せるように戸へ手を掛けた。
一方紅蜘蛛を目にしたキクチヨは気持ちがたぎり「てめェで仕舞いだ!!」と声を張り上げる。感に障った紅蜘蛛は銃弾をキクチヨに向けて放った。
キクチヨは手にしていた大きい柱を粉砕され、反動で後ろへ倒れる。それを狙い次の弾を撃とうとしたところで、紅蜘蛛の肩をゴロベエが投げた槍が貫いた。


倒れたキクチヨに駆け寄るカツシロウ。


紅蜘蛛の目の前にゴロベエが立ちはだかる。


――今だ。

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