samurai7 | ナノ
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風に晒される殆ど崖のような山道へと差し掛かり、足場の悪い岩場を歩いていく。
狭い道ということもあり、今はキュウゾウが直ぐ目の前にいて、隣にはキララ。
後ろにシチロージがいた。


徐々に日が暮れ、足元が見え辛くなっていく。
ユメカはごろごろした石に躓き、転びそうになったところを後ろからシチロージに支えられた。


「あ、ありがとう」
「いや。キュウゾウ殿、そろそろ休もう。
夜行動するのは分が悪い」
「…………」


シチロージの提案で、岩壁に抉れて出来た洞窟のような浅い穴で夜が明けるまで休むことになった。
小さな火を熾し、暖を取る。
シチロージが用意してくれた乾物でお腹を満たした。
しかしこの場にキュウゾウは居ない。


「あの方は、協調する気は無いのでしょうか……」


キララが肌寒さに身を竦め、呟いた。
シチロージが穏やかな表情で答える。


「アタシには、キュウゾウ殿は随分と律儀に見えやすがね」
「私にはとてもそうは見えません。
朋輩を斬り、表情ひとつ変えない。
それにあの方とはこれまで一言も言葉を交わしていません。
私達と離れて歩いて、拒絶しているようにしか……思えません」


キララがユメカに一瞬視線を送り、気まずそうに視線を落とした。
カンベエが認め、ユメカが想いを寄せているキュウゾウ。
認めたい気持ちはやまやまだが、キララの目に映るキュウゾウの姿はとても納得のいかないものだった。


ユメカには今、キュウゾウのことを説明できない。
下手なことを言ってはいけないし、キュウゾウの考えまでもは知り得ていない。
するとシチロージが口を開いた。


「朋輩を斬ったことはさて置き。
サムライは、口は置いといて、体張ってなんぼだから」
「…………」


ユメカが穴の外を見た。
火に当たっていてもこんなに寒いのに、外はどれだけ寒いことか。
ここからは見えないキュウゾウのことが気になり、ユメカは立ち上がった。


「ユメカ、どうした」


シチロージの言葉にあー…と答えに困る。


「ちょっと、体が温まっちゃって」


シチロージがふっと笑んだ。
こんなに寒いのに理由がそれか。
キュウゾウが気になって仕方ないという様子が見て取れた。


「気をつなさいよ、ユメカに何かあったらアタシがカンベエ様に責められる」
「……、うん」


シチロージの許しを貰い、緊張しながら外へと出た。
少し離れた平らな岩場の上に、あぐらをかいているキュウゾウが視界に入る。
充分足元に気をつけ、ゆっくりと赤い背に近寄った。


「中に居ろ」


手を伸ばせば届く位置までユメカが来ると、背中越しにキュウゾウは低く声を発した。
ユメカはそんな彼に背を向け、岩の陰に隠れるように座る。


「ちゃんと隠れてるからここに居させて」

「…………」


返事が返ってこない。
駄目な時にははっきりと告げてくるため、きっと大丈夫なんだとユメカは考えた。
拒否の言葉も覚悟していたため、安心してほっと白い息を吐く。
そのまま時間だけが過ぎるだろうと思えた時。


「怖くないのか」


突然掛けられた言葉に、ユメカは驚いて振り返った。
短い言葉を自分の中で消化し、言葉を返す。


「今はキュウゾウが近くに居るから平気だよ。強いでしょ」


正直な気持ちを伝える。
しかしキュウゾウが「違う」と答えた。


「俺が怖くないのか」

「え……なんで」


それ以上言葉が付け足されない様子に、
ユメカはゆっくりと膝を抱える。
よく考え、答えを返した。


「怖くない」


ヒョーゴを斬ったことを思い出せば正直悲しいが、キュウゾウに対して恐怖を覚えることは無かった。
怖かったらこんなに近付きたいと思わないはずだ。
自分でも驚くくらい、今傍にいたいのだから。

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