THE LAST BALLAD | ナノ

#134 あの日々に帰りたい

 エレンとライナーが再び対峙するその頃、シガンシナ区から離れた巨人の死体がそこら中に四散し、熱い蒸気となり森を漂う。その森を抜けた川のほとりでは大雨が降り注いでいた。

 ジークが己の命と引き換えに引き抜いた雷槍は遠雷を揺り起こした。
 ウミがリヴァイと共に吹っ飛ばされ、首と胴体が完全にバラバラに離れて彼の胸の上に転がっていた虚ろな目を、まざまざと愛する者のむごい姿を眼前で見せられた己が仕組んだトラップ。
 慟哭に泣き叫んだリヴァイが負傷した痛みと絶望に声を上げ失神していた。その、彼の上に覆いかぶさる形でそっと一つの影がゆっくりと動く。
 ふわりと濡れた髪が広がり、冷たい雨が次第に肌の温度を奪っていく。

「ん……あれ……? わ、たし、一体何が起こったの? なんでこんなに、焦げ臭いの……?まるで、人が……――人、ひ、と、いったい、何が起きたの? 誰、が、燃えているの?」

 彼女はリヴァイの目の前で死んでいた筈なのに。
 だが、次に見た時にはウミはいつの間にか元の人としての肉体に戻っていた。
 これが「始祖ユミル・フリッツ」の持つ始祖の力だろうか、自らの手で死ぬことも望むことの許されない彼女はこの世界で生きている。ウミの肉体を媒体にして。忽ち彼女の首と胴を繋いで直してしまった。

 まるで彼女だけが時間を雷鳴轟く直前に戻されているように。
 巨人化能力者であっても、首と胴体が切り離されていれば確実に助からない筈だったウミが今はしっかりと雷槍で吹っ飛び肉片になった身体はその姿、形を保っている。そう、彼女は死ぬことは無い、王が望む限り永遠に長い時間を生きている。

 真新しい漆黒の兵団服を着たままきょろきょろと、探していた唯一の人、誰よりも救いたい存在を探し求め視線を泳がせる。
 その目の前の、川の縁で倒れ込んでいる冷たいその幾度も触れあった身体が、いつもどんな時も自分を慈しみ愛してくれた最愛の彼だと、受け入れられずに。暫くさ迷っていた。

 ウミも状況判断が欠如し、自分の身体と首がバラバラに飛び散ったことを覚えていないようだった。朧げな手つきで、だが何か違う空気を纏い、そして見つけた影に思わず歩み寄ると……。
 うつ伏せのまま川の縁に這いつくばっていた彼をようやく視界に見つけるのだった。

「――あ、っ、……え? え? ――っ????」

 見間違うはずがない。魂から、心から求めた、唯一愛した人、身も心も捧げた人を忘れるはずがない。
 焦げ臭いにおいを放ちながら、虚ろに半開きになった彼の色彩は自分を見つめていた。

 ――「これからここがお前の帰る場所だ、ウミ」
「(あなたは私に、居場所をくれた。身分も証明できない、無い何もない無一文で地下に売られた、帰る場所を奪われた私に、)」

 ――「俺に申し訳なくて、責任感じて、黙って居なくなったんだろ。どうして、だろうな、慰めの言葉なんて考えずにさっさと迎えに行けばよかった、顔を見て、会えばそれだけで十分なのに。ウミ……許してくれ。俺が、馬鹿かった、お前一人に全てを背負わせた俺を。もう一度。今度こそ、お前を守ると誓う。だから、俺の傍に、戻ってきてくれ……」
「(あなたは、私を守ると、拙い言葉で精いっぱいに、そう伝えてくれた、あなたを泣かせたくないのに、悲しませたくないのに、私達の子供を死なせてしまった私を責めたりしないで、戸惑いながらも受け入れてくれた)」

 ――「俺はお前を傷つけることしか出来ない人間だ、それでもお前はこんな俺を受け入れて許してくれるのか、」
「(この身体も、この心も、すべてあなたに捧げたの、あなたの好きにしていいの、謝らないで、)」

 ――「いいな。もう二度と、勝手にどこにも行くんじゃねぇぞ……」
「(私を置いて逝かないで。リヴァイ。行かないで)あなたがいなかったら、私は、私として、居られなかった」

 ――「私、リヴァイはウミを生涯の妻とし、健やかなるときも病める時も、老いても、もし死が二人を分かつとしても、あなただけを一生愛し続ける事を誓います。誰よりも大切にしていきます」
「(私も、リヴァイだけを想うよ、一生、愛してるよあなただけを、)」

 ――「本当に、約束しろ。もし離れるようなことがあっても何度だってとっ捕まえて、そんでお前に骨の髄まで教えてやる。お前の帰る場所は、ここだ」
「(帰る場所があるから、私はマーレに行っても他の男の女になってもあなただけを想えるの)」

 触れ合えば、永遠を確かに感じることが出来た。みんなで見上げたいつも輝いていたあの星空の下で彼を思い目を閉じて。
 何時でも容易に彼を思い出すことが出来た。忘れないでと互いに誓い合った、何度も、離れないでと、幾度も抱き合った。肌の隙間さえないくらい、お互いに知らない秘密さえも無い程に抱き合い二度と離れないようにと。
 大好きで仕方なかった、振り向いてほしかった。自分を愛してくれたかけがえのない大切な彼の存在が今の自分を生かしてくれた。

 そう。真っ直ぐで几帳面さをそのまま表に表したような艶髪。虹彩の光を受けたような不思議な彼の鋭い瞳の色、薄い唇の形、背が低く細身の割に引き締まった筋肉質な重量感のある体つきも、耳元で囁かれると、それだけで膝から崩れ落ちそうな甘い声も。

 だが、これは、誰? 誰なの――?

「――っ! いやああっ!!!」

 思わず、触れた手を振り払ってしまう。ウミは必死になって叫んでいた。横たわる彼の姿に、絶叫せずにはいられない、誰よりも守りたくて、信じてきた彼がこんな変わり果てた姿で横たわっている。瞼を震わせて虫の息。
 ウミの声なき慟哭が反響すると、ウミはあまりの悲惨なその彼の原形を失ったまま血を流す確かにリヴァイだった物言わぬ焼け焦げた匂いを漂わせる肉体にたまらずその場で空っぽの胃の中のものを嘔吐した。

 幾らアッカーマンと言えど、彼でさえもその姿を見れば歴然だ。取り返しのつかない重傷だ。見た目以上に内部の損傷が、ウミの喉を引き裂くような悲鳴だけが彼女の精神をどうにか繋ごうとしていた。

「いや、いやああああっ――!!! リヴァイ、リヴァイ……あ、ああっ、うああっっ、ど、うして、なんで、嫌よ、ダメよ、あああああっ、どうして、っ、こんなむごいことが、そんな、っ……、なんで、どうしてぇえっ!! うあああああ――!!!」

 目の前の男が全身を吹き飛ばされた状態で横たわり、血まみれの顔には幾つもの雷装の破片が突き刺さり、彼の端正な顔は血の海の中で息絶えようとしていた。

 遅かれ早かれ彼の命はもう間もなく。静かなる永遠の安息の眠りが彼を自分から遠ざけていく。
 土砂降りの雨の下で、悲しみに泣き崩れるウミが必死にリヴァイの意識を繋ごうと叫び続けるが、触れた場所から奪われていく体温にこれまでどんな責め苦を受けても涙の一滴も落ちない位に、彼を救うと決めた決意は脆くも崩れ、こんなにも溢れる涙が止まらない。

 どうして、なぜ彼がこんな目に、自分は彼を止めたかった、彼に纏わりつく死の螺旋から彼を引きずり出そうとしていたのに。これでは本末転倒、肝心の生かしたくて仕方なかった、最愛の彼が死んでしまう。このままじゃ、彼は――。

 ――「(また、今度こそ、守ると決めたのに、私の目の前で大切な人が、愛したあなたが、死んでしまう)」
 ――「(また私は。失ってしまうの? あなたの手を、永遠に、もう、二度と)」

 何のために、自分は彼の子供を産んだというのか、何の為に、エレンの手を取りそしてあの座標を走り抜けて来たのか。
 振り返れば、背後に居たのはそんな自分を見つめる虚ろな目をした自分の器を待つ沈黙の表情をした少女。

「は――……あなた、ユミル? なっ、何、何よっ、何がおかしいのよ……っ! 私を、見るな、そんな目で見るなぁっ!! そもそも私はあなたに引きずり込まれた、私はあなたの器の為に、何千年もの時を越えて、ようやくこの世界に生まれたと、言うのに……は? え? これは、何の記憶――」

 奴隷として今も王の愛に縛られる悲しき存在ユミル・フリッツは無言でウミを見つめていた。
 過去の――かつて古の時代に裏切り者として拷問され、火あぶりにされて殺された過去の自分、そんな自分が今こうして愛されるべく愛された彼の為に生きようと心を決めた。
 祖国のマーレにもエルディアにも裏切られた過去の「初代ウミ・ジオラルド」自分が何のために、先代の自分の魂を再びこの世に呼び戻して「始祖ユミル」の器になるべくしてその継承の力を得たというのか。

 全ては、彼が生きる未来の為、愛し愛されたこの島を守る為。
 その為に、今まで自分は行動してきたのに、

「何のために、私はあなたと家族を築き結婚したのっ、何のために、私はキヨミ様を頼りマーレに渡って、父親がエルディア人を救うために、私は作られたクローン人間だと知った。でも、リヴァイに出会えたから、愛されたから、もう復讐は止めて愛に生きようとしたの。この島で出会った彼を守るために、この島以外の人類を滅ぼすことをエレンと決めた。始祖ユミルの器として彼女をこの世界に再び蘇らされる存在になり果てても自分の意思でエレンが「始祖」の力で「地鳴らし」を起こすための座標になって、エレンに喰われて死ぬと、そう、決めたのに……! 知りたくなかった事実も、愛してくれた。カイト・ジオラルドの叶えられなかった夢を託すためにこの世界に生まれたというのに。何のために、没落したジオラルド家の地位を確立するために、最愛の彼の前で好きでもない望んでも居ない、あんな醜い男と愛のない結婚をしたのよ……あんな、醜くてリヴァイとは比べようもない男と……」

 ――「(もう、生きていても、巨人としてこの命尽きるなら、せめて私は。世界が終わるなら、あなたとこのまま一緒に死にたいのに)」
「いや、いやっ、あう、う……っ! うあああ――っっ!! なんで、なんでなんでぇっ!!! どうしてよぉっ!!! どうして私だけが……生きてるのぉおっ!?」

 もう彼は動かない、抱き締めても、息を込めて口づけても、その頬に触れても、冷たくて、雨や土にまみれたまま動かぬ彼の玲瓏な顔は右半分を負傷し、立体機動装置のブレードを握っていた立体機動装置にとって必要不可欠な人差し指と中指ごと飛んでいってしまって二度と戻ることは無いのだ。

 彼がどんなに強くて丈夫な肉体を持つ「アッカーマンの一族」でも、人間の姿形を保ちながらも決して巨人ではない。雷槍で吹っ飛ばされて欠損した指は生えてこないし、喪われた右目の光は二度と戻らない。
 深い傷から溢れる血が止めどなく雨に流れても決して止まる事無く彼を濡らしていく。

 胸と身体を引き裂く痛みなど、これ以上の地獄は無いと信じたかった。
 あまりも悲痛な彼女の喉をさえも引き裂くような痛ましい絶叫が森に響き渡る。
 こんな絶叫をあげたのは、アヴェリアが自分の母と中央憲兵の陰謀で自分達と引き離された際に医者が嘘で「死産」だったと告げた時以来だ。
 あの時以来、誰もそんな彼女の痛ましい叫びを聞いたことはない。

「ああああああっ!!!! ああああーー!!! どうして……どうしてなの、っ、どうして、よおぉ――っ! もうすぐ、後、もう、少しなのにいっ、こんなの、こんなのっ、あんまりよっ、私はただ、あなたが、もう二度とアッカーマンの血とは無縁の、ッ、エレンが言ってた言葉の通りにしたのに、信じて行動したのに、エレンが、これからの世界は「巨人が居ない世界」になる……って、あなたも、アッカーマンの血を酷使しなくてもいい、巨人科学から生まれたアッカーマンの血も消えて、ただのリヴァイになれるのに。幸せにしてあげたいって願って……。願っているのに……。それだけが、私の、ただひとつの望みなのに、どうして私は……何も変えられないのよぉっ!! 何のために、っ、この手を汚し続けたの……?」

 地面にうずくまり、大声で泣き喚くウミの身体はただ愛する人を幸せにして、生きて欲しい天寿を全うして欲しい。と、幸せを切望する思いだった。
 孤独に震えている。ただ愛する者と幸せになりたかっただけの、哀れな女が愛していた男を掻き抱き泣いていた。
 望めば当たり前に得られるはずだった平穏な日常、幸福を奪われた女は逃げ場を失いさ迷っていた。ようやく手に入る一歩手前で、掴んだ幸せが幻のように儚くも一瞬で消えてしまった。

 髪を激しく振り乱し叫ぶウミを背後でただ黙って見つめているユミル。
 彼女に意思はない、ただ目の前の王に服従するのみ、だがそれは肉体が無い自分には出来ない、器が必要だ。そう、それは目の前のウミ。

「もうすぐ、なのに! あなたがもうすぐ戦わなくていい、普通の人間として生きていける未来が、もうすぐそこなのに!!」

 ――「お前が殺した、お前が救いたかった人間をお前が殺したんだ」

 そう、言われてるような錯覚を抱いてウミは震えが止まらず彼を掻き抱き泣き叫びただ声が枯れるまでその名を叫び続ける……。

「……嘘だ、嘘だ、嘘だっ―――!! リヴァイは……どんな時も、いつだって私を助けてくれた、私より先に死なないって、私を残して、死んだり、なんか……!!」

 ――「……ウミ。お前が好きだ、もう、抑えられねぇ……どうしたらいいのか分からねぇんだ。お前が、大切なのに――許してくれ、このまま、俺を受け入れてくれ……」

「いや……嫌よ、もう、こんな……こんな、嘘……! 信じない! 私はっ、もう、信じないっ! うああ――――ッ! うあああああっ!! クソッ、クソクソクソクソ!!!! 憎い! 憎い!! この世界が! なんで、どうしてよおっ!! やっと、やっと、私を愛してくれる人に、っ! 待っていたのに、ようやく、この身体として私は再びこの世界に生まれてようやくっ、私を愛してくれるたった一人の男に出逢えたのに!!! 何でよおおおおっ、ふざけるなぁああああ!!! うあ゛―――っっ!!! ア゛ァ―――っっ! あ゛―――っっ!」

 堪え切れずに顔を覆い、天に在らん限りの声で叫ぶ彼女はもう人間ではなかった。愛した人を失った、自らの手で守れなかった哀れな女。
 喉が割れんばかりの絶叫は誰も彼女を救ってはくれなかった。

 もし、自分が造られた存在と知っても悲しまなかったのは、彼の存在があったから。世界に意味が無くても、自分には彼が居たから彼と築いた家族、可愛い子供たちが居たからそれだけでよかったのに、幸せだったのに。
 心の底から全身全霊をかけた愛だけ。すべてと引き換えにしても構わなかった、自分の命が尽きても、惜しくない愛。彼の存在で存在していた自分は彼に愛されてはじめてその存在の存続を許されたのだ。
 だが、その彼はもう居ない、彼の居ない世界に、彼に愛されることのないこの身体が今かろうじて存在している自分の心などもう、何の意味もない。

 彼はもう、居ないのだから。

「どうして……私じゃないのぉぉ……? どうして、あなたが、死んでしまうの……? なんで、なんでなんでぇ。もういやだぁああ、こんな風になるなら、わ、たしが、生まれて来なければ……。私はただ、変えたかったのに、この未来を、自分がどうなっても良かった、あなたがいればそれだけでこんなことにならなければ……私の血のせいで、こんな、ただ、あなたに、生きていて欲しかった……それだけなのにぃいいい……」

 もう、疲れてしまった。
 これまで突き進んで来た道は閉ざされた。彼の居ない世界に意味など無い、もう、全て終わってしまったのだ、彼は死んだ、もう、終わりだ。
 エレンに頼んだところで彼を生かせる方法など存在しない。なぜなら彼はアッカーマン。「始祖」の介入、ユミルの民の呪いを彼の身体は一切受け付けない。

 泣き崩れた絶望の果てに、彼女のかろうじて保たれていた精神は完全に壊れてしまった。壊れた心が元に戻る事はもう二度とない、深い深い闇の底へ。彼女の心の欠片は砕け、そしてそのまま閉ざしてしまった。
 彼女の小さな小さな希望、「愛する人が末永く生きていける未来」それだけが救いであり、願いだった。

 たった一つの願いさえ、叶えられずに横たわり動かぬ彼を。あの日の星空のような彼の眼差しはもう自分を映すことは無い。

 彼女はただ器として「始祖ユミル」をこの世に映し出すための存在へと今壊れた精神の中に侵略してくるように彼女の背後で黙ってその光景を眺めていた。
「始祖ユミル」は何も言わず廃人となったウミの肉体を抱き締めると、ウミはそのままくたりと彼女に身体を預け、自分の心の中へ落ちていき瞳を閉じた。

 やがて――。同じ背丈の2人は静かに重なり、そして一つの意思となるのだった。

「私が終わらせる。ずっと、待ち続けていたの。私を救い出してくれる人、私を愛してくれた人、あなたはそう、私の全てであり、命であり」

 そして継承された。
 この魂は器、そして彼女が意識を手放したのを見逃さなかった。

「私は……そう、これが、自由ね」

 手を差し伸べて来たのは。私はこの男の下僕になるのだ。今は切り取られた舌はここにある。ここに。そうだ、自分はずっとここに存在していた。これは器は自分はまたこの世界に蘇ったのだ。

「王の望みの為に。ジオラルド家のこの女の身体を器とし、あなたに捧げます。私は偉大なる王の為に、この世界に再び、王の望みのままユミルの民をこの世から――。根絶やしにします」

 ウミだった器はこの世に道を通じてようやくこの世界に蘇るのだ。
 彼女の名前は始祖ユミル・フリッツ。「座標」に眠る「支柱」となり、そして王の血を引く「驚異の子」の元へとずりずりと再生しない両足を折り畳んだたたんだまま引きずる。と、彼の身体を忽ち再生し終えると、静かに微笑むのだった。

 王の寵愛を受ける愛しいこの世界に再び生を受け、自らの種が招いた悲劇を、永遠の滅びの為に今一度蘇るのだ。この身を賭けて自分は歌うのだ、滅んでいく未来、世界の終わりを。もう、誰よりも心の支えにしてきたはずの彼はもう居ない。

 FINAL SEASON.3【喝采と激情に壊れる楽園】Fin.

 ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。
 すれ違いからの苦しい展開でしたが、夢主は結局ジークを食わせてヒストリアを犠牲にする道を選びましたが、もちろんヒストリアを巨人にしたくない夢主と対峙、しかし、最後まで足掻いたジークを見抜けず、リヴァイは雷槍の直撃を喰らい本誌の通りになりました。
 夢主が吹っ飛んだのに生きているのは彼女が「始祖ユミル・フリッツ」の脊髄液を取り入れた始祖ユミル・フリッツがこの世に実体化するための器になったからです。
 私の技量不足でその肝心の核の部分をうまく説明が出来ず、本当にすみません。

 肝心のリヴァイを守ることが出来ず、彼は雷槍の直撃を受け(瀕死の重傷)死に(実際に死んではいませんが)読み手の方でもショックを受けたように、彼を愛していた夢主は酷くショックを受け、目の前の彼の姿にこれまでエレンと共に協力し敢えて島を離れ子供達に忘れられてそれでも、戦っていた心が彼の目を覆いたくなるような姿にとうとう我慢していた心が壊れました。

 次章でついに、約三年ほど続いてきたこの物語も最終章を迎えます。
 私がこの物語を描こうと決めたのは2019年のseason3のPart2の最後にファイナルシーズンの予告が流れた時でした。
 大好きな進撃の巨人が終わってしまう、漫画は2019年当時はまだ連載していましたが、もうすぐ終わるんだろうなというのをぼんやり感じていたので。
 これまで書ききれない程に色々なことがあって、二次創作に完全に嫌気が差し、もう二度と夢小説は書かないと離れた筈なのに、原作沿いを書くのは本当に労力が居るのでもう書きたくないと思っていたのですが、大好きな進撃の巨人が終わると知り、とても書かずにはいられませんでした。
 そして気付けば漫画は完結し、アニメを残すのみで。とても寂しい気持ちですが、その寂しさを埋めてくれたのもこの連載夢「BALLD」そして「THE LAST BALLAD」でした。もともと好きで、でも自分の技量では書けないと思っていた進撃の巨人という素晴らしい世界観をお借りして書いてきた愛の物語。私の進撃の巨人、そして二次創作に疲れ果てていた私を再びこの世界へ戻してくれたリヴァイ兵長、彼を知れば知るほど好きでたまらず、いい年して自分でも分かっているのですが、彼への止めどない惜しみない愛を込めました。
 リヴァイ兵長を自分なりに幸せにしたくて初めてこの連載夢。
 とても寂しい気持ちでいっぱいですが、その寂しい気持ちを抱き合わせながらも年始に決めた「年内完結」は今も忘れておりません。
 いずれ自分がここを去った後も、私の中でもみなさんの心の奥隅に、少しでもこのお話の記憶が残ってくれればいいなぁと思って、決してお借りした世界観を壊さぬように。また書き進めていきます。自分の夢創作人生において恐らく最後の長編になると思います。引き離された二人の愛の結末、家族の愛、友愛、仲間への愛、いろんな愛を肩氏にしたいと思っておりますので、どうか最後までお付き合い頂ければ、幸いです。

 それでは次章、最終章でまたお会いしましょう。
 2021.10.17.サクヤ
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