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「39th.secret 暗闇を裂く紅」


「…っ…!」

指先から微かに滲む血を含み舌先で吟味するとヴォックスは満足そうにウミをそのままベッドに組み敷き無垢な血を得ようと更なる触手を伸ばしてきたのだ。

「怖いか…初めて血を啜られるのは。」
「…!
い、いや…っ…」

迫り来る強大な力を秘めた男への恐怖にウミは必死に身を捩らせ暴れた。

「クッ、あの男はさぞや悔しがるに違いない。涎を垂らしてまで耐え抜いたその蜜を味あわせてくれ、」
「っ、本当に、本当にアルベルさんは無事なの…?」

瞳にいっぱいの涙を溜めて。
身を贄に捧ぐと決めたが、それでもウミは彼の身だけが気掛かりだった…

「若いお前の流す涙に染まった血が、何よりも力になる、瑞々しくて幸いだったな」

吸血鬼を逆に喰らい魔物と化した目の前の男にこみあげるは怒り以外に無い。
悔しくて、悲しくて涙がこみ上げた。

彼のために捧げる決意を決めたというのに結局手のひらを返せばあっさりと助けを求める自分が何とも情けない。

結局、離れられない
感情も理性も殺してしまえばいい…自分は踊らされる可哀想な人形。人形に感情は要らない。
しかし…、殺せなかった、
全てを犠牲にしても
彼の存在が病弱だった自分には生きる希望で何よりの糧になり赤く光を照らしてくれた。

愛だけが満たしてくれるあの歌を叶うなら、もう一度…

「ア、ル…」

小さく、微かな声で彼を呼んだその刹那…

「ヴォックス…!!!!」

弾け飛んだ希望から隔離した世界で、淡い黄緑の閃光が爆発し強烈な爆風がウミを包み込みそして、

待ちこがれた人物はいつもウミに手を差し伸べてくれていた。
八方からの銃弾を浴びながらも、アルベルはウミの香りだけを嗅ぎ分け、そして君臨する。

「…クソ昔前の伝承が俺に通用するわけねぇだろうが阿呆、


ウミとクリムゾン・ヘイトを返してもらおうか。」
「ア、ルベル…!」

心から愛する人に巡り会えたら、二度とその手は繋いだら手放すな。

どんな荒波が2人を引き裂こうとも。決して…





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