愛し方さえも分からずに | ナノ
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「35th.secret Ilove youさえ」


「あ、ああっ…いや、いやああっ!」

一発、更に二発と容赦なく彼の身体を銀の弾が貫きアルベルは吐血しそのまま崩れ落ちてしまう。
ウミの悲鳴にも似た絶叫が不気味な静寂に包まれた屋敷に木霊した。


「こいつは吸血鬼として危険人物と見なした、」
「アルベル!アルベルっ!しっかりしてぇ…っ!
ごめんなさい…私が、私の所為で!いやああああ!」
「…っ………」

しかし、アルベルはあまりの激痛に声すら出せずただ涙を浮かべる小さな少女に苦痛混じりの悲しい視線を向けることしかできなかった。

泣かせてしまった、
悲しませないと…約束したのに…これならさっさと止めを刺してしまえば良かったと言うのに、

「こいつは初めは私の手に渡るつもりだった、返してもらうぞ」
「…っ、よくも!」

傍らに転がったクリムゾンヘイトを手にヴォックスは勝ち誇った様に心底嬉しそうな忍び笑いを浮かべ恰も自分の物かの様にアルベルが所有していたそれを彼の手から奪い手にしてしまったのだ。

「アルベル!っ、離して!!」
しかしその手が彼に届くことはない―…

傷ついたアルベルを無理矢理後から入ってきた部下達が立ち上がらせ、そしてウミを羽交い締めにされ、もがくウミだが屈強な男達にその力が適うはずもなくアルベルを助けることも出来ない自分に泣き叫んだ、ただ、

「アルベル…っ…ごめんなさい…私が、私が貴方をっ!」
愛してしまった、愛し合ったその罪が今更に自分達を攻めようとは!…

ヴォックスは涙を流すウミの姿を満足そうに見つめ嫌味たっぷりに不気味な笑みを浮かべ吸血鬼の命の源でもある鮮血を流すアルベルの胸ぐらを掴み顔を上げさせた

「お前も同罪だ…滑稽だな、まさか歪みのアルベルと呼ばれるお前が人間の女を愛し双牙すら穿たずに密会を繰り返していたとはな…」
「…っ…相変わらずだなぁヴォックス、セコい真似を!」
「さぁ、どうするアルベル。
この女も同罪だ、汚らわしい吸血鬼と情を通じたとは…とんだ女だ」
「…っ…アルベル、ごめんなさい!私が貴方を…っ…私に構わず早く逃げて!」

大粒の涙を流して叫ぶウミの姿にアルベルは胸を激しく締め付けられた。

「ヴォックス…ウミに触るんじゃねぇ!そいつは何も悪くねぇ、俺が全ての元凶だ…!牢にぶち込むなら俺をぶち込め阿呆!」

露わになった首筋には咬み痕は無い、しかし吸血鬼の自分と人間のウミの間に生まれた記憶がもうウミが死罪になるのは明らかだ…

何てザマだ…
彼女を愛してしまったばかりに
彼女を巻き込み、あまつさえ家族すら…自分が奪ってしまった様な物だ。

「ヴォックス、ウミには手を出すんじゃねぇ…そいつを解放しろ!!」
「それが人に物を頼む態度か、」
「…っ…!」

威圧感溢れるアルベルの声と満身創痍の身体にも関わらず放たれし眼光と覇気は健在、竦み上がるヴォックスの部下達はウミを離すがヴォックスは未だ何かを企み不気味な眼光を放ち笑っている。

とんだ屈辱だ…

「なぜ生きていやがるてめぇ…!!」
「決まっているだろう、」
「…そうか、喰ったんだな…そして逆に吸血鬼にその魂を喰われたかヴォックス…情けねぇザマだな!」
「何とでも言うがいい、私には力が必要だ、瑞々しいウミの血がな、しかし…まずはお前だアルベル!!

こいつを牢屋に連れて行け、ハンターを大量に虐殺しあまつさえ人間の女に手を出した。反逆の罪でこいつを尋問に掛ける。」

それが狙いなら…

「やめて…お願い!もうやめてええっ!!」
「ウミ…」

連れて行かれる彼の傷の身を案じ暴れるウミの視界に映る彼ははもう涙で滲んで見えなかった。
その涙すら拭うことは許されず激しい痛みに蝕まれたアルベルの瞳は瞬きもせずにただ彼女を見つめていた。…

「アルベル、っ!待って、連れて行かないで!」

2人には見つめ合う時間すら許されないと言うのか…

「アルベル…嫌!嫌っ!逃げてえっ、」
「…」

しかし、ウミが必死にアルベルに手を伸ばしアルベルも伸びてきた手を伸ばしてくるが、ヴォックスにより遮られ互いにその手が絡むことは最後まで叶うことは無かった。

代わりにアルベルは彼女に苦痛混じりの笑みを向ける、

「アルベルッ!アルベル!いやっ!行かないで!私も連れていって」

本当はずっと…静かに傍らで彼女の笑みを守り続けていきたかった。
しかしー思い知らされた現実。
結局彼女の血が欲しくてたまらなくなってしまった、
あまつさえ彼女の大事な者達を奪ってしまった。

「…もう傍に居てやれねぇ…………それでも、俺は…」

罪にまみれたこの左手すら、忘れてしまえるほど暖かな温もりが包んでくれた。

俺は阿呆だ、どうしようもねぇクソ虫だ。


「…愛してる………」

お前を……愛しちまった…、

「…っ、あ…ああっ…いやぁぁあああー!アルベルー!!!!」

悲痛な彼女の叫びだけがいつまでも虚しく響くだけだった…
















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