miss you D2前編 | ナノ

fortune.5 This is where the end begins


すやすやと眠りについたリオンと美波を部屋で寝かせて、別の部屋では最初に電話をした相手は今までリオンが居なくなってからその中でずっと支えてくれた唯一無二の親友で、今は日本とアメリカ、離れ離れの友里だった。

何度か呼び出し音がなると、すぐに友里が電話にでて、驚いたように向こうからは戸惑ったような声。

アメリカと日本と言う離れた距離でなかなか電話も難しい中でよこしてきたのだ。
友里はすぐに何かあったんどと悟っていた。リオンのことを知る友里には話しておきたかったのだ。自分が、リオンの世界に行くことを。

「もしもし、海?久しぶりね!どうしたの?」
「時差あるのに、急に連絡してごめんね!」
「久々に電話かかってきたのよ?時差なんか気にしてないわよ、どうしたのかしら?」
「うん、久しぶり!あのね、友里ちゃん、驚かないで聞いてね。急なんだけど私、その、リオンの世界に行くことになったの」
「えっ!リオンの、世界に?ど、どういうこと?」

其処からは掻い摘んで説明した。
斧を持った殺人鬼のこと、父親のこと、そうして迎えが着たんだということ、もしかしたら、もうここに戻って来れないかもしれないということ。
しかし、そんな信じられないような話でも友里はまじめに相槌を打ち、黙って海の言葉に耳を傾けていた。
話し終えた後、友里は落ち着いた声で海に語りかけた。

「海、行って来なよ。私、2人がどうしてこんなにお互いを好きなのに離れなきゃいけないのか、ずっと納得できなかった。
リオンが居なくなって、死んでしまいそうなくらい弱った海を見てるの、ほんとにつらかった。
よく分からないし、不安なだけど、でも、わたし、海にはしあわせになってほしい!
2人が結ばれる…でも、わたし、海にもう会えなくなるのは、つらいよ、そんなの嫌だよ…」

電話の向こうからは友里の啜り泣きの声が 聞こえて来た。海もつらくなり、目頭の熱さを押さえきれずにいる。

「海とリオンは本当に運命なんだななぁって思ったよ!わたし、2人にはほんとには幸せになって欲しい、けど、海が、もしかしたらもう会えなくなっちゃうかもしれないなんて…っ!!」

「友里ちゃん、ごめんな、さいっ!でも、必ず、私、リオンと幸せになるからね、リオンと一緒に戻って来るから、友里ちゃんも、だから大切な人と、幸せになってね」
「海……そうだ、あのね、わたし、実は結婚することになったの、」
「ええっ!!」
「本当はギリギリまで内緒にしたかったんだけど、もう話しちゃうね!」
「友里ちゃんが、結婚…するんだ!」
「意外?」
「だって、友里ちゃん、1人の人に絞って、その人だけを好きになるなんて無理だって、言ってたし……」

いつも身体だけの付き合いで複数の男と関係を持ってきた友里が1人の人と付き合って、そして、結婚という選択を選んだ友里から出た言葉があまりにも嬉しくて、海は涙を浮かべていたが次第にまた笑顔に戻っていた。

「きっと、わたしが結婚にあこがれたのは、1人の人と、愛して愛されたいと思ったのは、海と、リオンのおかげよ、ありがとう、海……2人を見てて、そう思うことができたから…でも、何か、リオンのことを思うと…なかなか言い出せなかったの」

友里は少し言いにくそうに話題を切り出したのを海は理解した、自分の所為でたくさんの人に気を遣わせたりしてしまっていたんだと。

「海が誰よりも結婚に憧れていたじゃない、響介と結婚したいって言ってて、ダメになって、そしてリオンに出会って、……なのに、リオンと、幸せになりたかったよね…わたしも、結婚するって、決まって嬉しいもん。ずっと結婚に憧れてきた海だったら、きっと…」
「私は、いいの!もう平気、泣いてばかりじゃ、リオンに釣り合わないもん
そうだ、相手の人は誰なの?前に話してた年上の人?」
「それが、」

そうして、電話に出たのは意外な人物だった。
海は驚きに言葉を忘れたが、そう言えばアメリカに行って以来の会話だった。

「海ちゃん?もしもし、俺だ俺だ俺だー!」
「えっ、海翔君!?」

なんと、電話に出たのは海翔だったのだ。
海がアメリカに行って以来の事だ。2人は、海が居なくなってからも頻繁に会っていたらしい、歳の差を超えて、2人が結ばれたことを海はうれしく思った。海翔が成人した日にプロポーズしたんだと話すその声はとても生き生きしていた。

お互い割り切った関係て体を重ねたのが切っ掛けだったのも2人らしいが。
そして、友里のおなかには、もう新たな命が宿っていると知り、海は嬉しそうに微笑んだ。

「そうだったんだね。おめでとう!本当によかった、ほんとは2人が、ずっとうまく行ったらいいのになぁって、思っていたから、」
「海ちゃん、そうだよね、誰よりもあいつと結婚したかったのに、先にごめんね、俺らが先に幸せになっちまって、」
「いいの、海翔君には、お父さんのことで、たくさん迷惑かけたから、お父さんの分もありがとう、見守っていてくれて。
ふたりの結婚式も行けなくて…ごめんね、ふたりの幸せ、いつも願っているからね」
「海ちゃん、」
「海……」

本当は不安でたまらない。
リオンに会える確証もなければ、父親の行方も分からないまま、クライスが居ても、海を本当に、心から安心させてくれるのはリオンだけ。
堪えきれず、海が声をあげて泣き出すと、受話器越しの2人の瞳からも涙が溢れ出した。
せめて、最後に2人の姿を見たかったが、それも叶わないのなら、海は、時間が刻一刻と迫る中で精一杯の言葉を並べた。

「友里ちゃん、海翔君、今まで、ありがとう……私、リオンと一緒に生きて行くからもう、心配しないでね、大丈夫。
ふたりに、会えて良かったよ。今まで ずっと支えてくれてありがとう。
私、強くなる、だから、心配しないで、幸せになってね、」
「海、わたし、今から海に会いに行きたい、今すぐ会いたいよ…。
でも、時間無いんでしょ?わたし、こそありがとう。わたし、もし女の子が生まれたら海って男の子なら、リオンって名前付けてあげたいな、」

友里との別れを惜しみながら、ふたりはお互いの幸せを祈ると何度もまたねを繰り返して、そうして電話を切ったのだった。




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