それでも、僕は | ナノ


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 俺はアランとやりたいことがたくさんある。その中でも最優先でやるべきなのが「兄弟」になることだ
渡したコップを不思議そうに眺める俺の半身。この世界では双子どころか血すら繋がっていない

 だから、今日アランと兄弟になる。俺は持っていたコップを握りしめた



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 表向きでは完全に死んだことになった海賊王の息子。オヤジも戦場で命を散らせ白ひげ海賊団は実質解散みたいになった
なんとかジンベエたちに逃がされた俺はアランの墓参り後、ジジイと共にフーシャ村へ戻った。
 なんだかんだでアランを可愛がっていたダダンはジジイを殴り飛ばした後、俺を睨みあげる。一発、いや実の弟を見殺しにしたんだからもっと受けるだろうと大人しく目をつむるが、来たのは激しい痛みではなく優しい抱擁で
まだまだ現実を受け入れられていない俺はダダンの肩を濡らしてしまった。泣き虫になったんじゃねェか?なんて軽口を叩きながらも、情けねェ俺の顔を見ないよう強く抱きしめてくれた

 それから俺はアランがよく訪れていたらしい島々を巡った。そこそこ名の知れた海賊の子供や魚人のハーフなど一般的には倦厭されがちな子供たちが、どこの島でも楽しそうに暮らしていた。街へ出れば遠巻きにされている子供は勿論いたが、当時の俺たちみたいに完全に居場所がないわけではない

「彼が、何をしたと言うんだ……!」

「そうよ、あの子自身は何もしてないわ!それどころか、私たちを救ってくれたのよ!!」

 伝電虫の生放送でアランが海賊王の血筋だと知った島民たちはアイツに怒るどころか、処刑を実施した海軍たちへ怒っている。その事実にどうしようもなく嬉しく感じた。俺にとってオヤジたちがそうであったように、アイツにも血筋を気にしない人間が周りにいた事に安堵した

「少し前までは興味ないどころか、嫌っていたのにな」
 弟の生きた証を勝手に辿り勝手に安堵してる俺の自分勝手さに、吐き気がする。今更、もういない弟を追い求めてるなんて、未練がましいにもほどがある。また目頭が熱くなり胸が苦しく、息がし辛くなった

「それは悔し涙だよ。アンタ、ずっと後悔してたんだね」

 島の酒場にいた、初老の女性に言われた言葉がスッと心にしみた。後悔、そうか、俺はアランの事をずっと後悔してたんだな
アイツがいなくなってから、俺は随分と泣き虫になった。もうルフィに泣き虫なんて言えねェな
 「アンタもアランも、随分と不器用だったんだねぇ。似たもの兄弟だよ」少し呆れたような声でそう言った。久々に兄弟と言われた嬉しさ、もっとアイツと話せばとの後悔が合わさってぐちゃぐちゃなった俺は、グラスを一気に飲み干し帽子を深く被った

「今のアンタを捕まえたらあの子が報われないからね。アタシは帰るとするよ」
正義を背負った彼女はエースに一杯のグラスを渡し、去って行った


 それから、島々を巡っている間に死んだと思ってたサボに再会し、俺も革命軍へ入った。一緒にドレスローザに乗り込んでアランの形見をサボが受け継いだり、ルフィの手助けをしたり色々な事をした。
 その中に、アランもいればと思ったことは少なくない。ずっと後悔していた。だから、今回は後悔しないようやりたいことは全部やると決めた


「これ、なに?」

「本当は酒でやるんだけどな、今のお前に酒はキツいだろうからジュースな。ルフィ、お前もさっさと来い」

「おう!」
「これ、久々だな。今回はまだやってなかったもんな」

 コップを高らかに掲げるルフィとサボを真似るようにコップを揚げるアラン。やっと見つけた。これで漸くみんな兄弟になれる!
ニィッと笑ったエースもコップを掲げる。コツンとぶつかったコップから少しジュースがはねた

「盃を交わすと兄弟になれる。これで俺たちも晴れて兄弟だ!」

「きょう、だい…」

「エースの弟なら俺の弟、ってことで長男二人に弟二人だな」
「にしし!兄ちゃんが増えた!」

 ルフィたちの言葉に嬉しそうにジュースを飲み干すアラン。勢いが良すぎて噎せてやがる
「世話の焼ける弟が増えたな!」笑いながら背中を摩るサボも噎せたアランに爆笑するルフィも嬉しそうだ

「兄弟……僕も、兄弟に入っていいの?」

「当たり前だろ。」
 お前は俺の半身なんだから。

「そっか……そっか、兄弟かぁ…!」

 目尻に涙を浮かべ喜ぶアラン。俺も溢れ出そうになった涙を見られないようルフィとアランを乱暴に撫でた
傍で見てたサボにはバレバレだったが、今日くらいは見逃してくれる、はずだ



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