リセンの果て



切り取り線を半分に割って
キリトとリセンが生まれ
私はリセンの担当
本当はキリトの方がよかった
キリトは何でも出来る気がする
如何にも主人公のような名前
リセンはどう足掻いても脇役
序盤でやや強い敵として登場し
二話ほど尺を稼いで死ぬ
そしてキリトは成長する
成長のために切り取られた切り取り線の端の端

カタンというゲームで
開拓者ごっこをしている
僕の星は32年前に所謂滅びを迎えてしまったのだが
幸い銀河共通言語の普及しきった後だったため
教育機関で共通言語を学んだ僕は
対戦相手に困ることはなかった
ボードの上で拓かれていく星を
いつか引っくり返して
そのまま

水筒の中に入っているのは何汁ですか?
弁当箱を組み立てて壊す一連の作業はもう覚えましたか?
これは散歩をしているのではありません
ただ咲こうとしているものを
一粒一粒数えるように踏み潰す
穏やかな装いの夫婦
蜜を運ぶ羽虫
上昇する気温
日が長くなる前に
今からたった32年後に
これは散歩をしているのではありません
覚えていることのできなかった
生まれたばかりの子猫の爪先
去年とまた同じところに土筆が生えています
日が長くなる前に
弁当箱を組み立てて壊す一連の作業はもう覚えましたか?
柔らかな日差しの花弁
挨拶を交わす季節です
食べ残したものをきちんと冷蔵庫にしまって
二話ほど尺を稼いで死ぬ
いつかボードの上で拓かれていく星は
一粒一粒数えるように
これは散歩をしているのではありません
交差していく花弁の
32年前の日差し
覚えていることのできなかった
切り取り線の端の端の
産声もあげずに溶けていった花弁
一粒一粒とじ込めて
真っ暗な水筒の中に
確かに入っていたのは
今からたった32年後の
引っくり返された無数の日差し





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