4話
「蔵、今日一緒に帰ってもいいかな?」
前まではこんなこと聞かなくても一緒に帰ってたのに。
「…おん、ええで」
蔵の好きな子は今はいないみたい。 だってあの完璧な彼が好きな子に彼女と一緒に帰ってるとこを見せるわけが無い。 ほんと完璧な人だわ。 どこまでも。
前はさりげなく差し出された手も、今は差し伸べてくれない。 蔵の手はテニスバックにかけてある。
校門を出てしばらく歩いた。 出来ることなら早く伝えてしまいたい。 でも躊躇ってる私もいる。
「女の子がひとりで危ないやろ?」 「ふふっ、蔵のほうが逆ナンとかされちゃいそうだけど」
「それだけはあかんわ」
きっとそれは思い出が綺麗すぎるから。
多分蔵はなかなか別れを切り出せないんだと思う。
きっとそれは私への同情。 だから、あんな証拠とか残して、私からフらせようとしてるんじゃないかな?って。
だから、
その期待に応えるよ。
「蔵、 話あるんだけど…………」 「…何?」
小さく息を吸う。 この一呼吸では、私の肺はあまり多くの空気を取り入れてはくれなかったようだ。 すごい苦しいもの。
「…別れよ」
蔵の顔がまともに見れない。 あなたは今どんな顔してこの話を聞いてるの?
「……蔵の中途半端な優しさがすごく辛い」 「なんやねん、中途半端って…」 「好きな子、いるんでしょ?私よりも…優先したくなる女の子が…できたんでしょ?」
この言葉をいうとき、涙が零れるんじゃないかってほど目頭が熱くなった。 でもここで泣いたら本当にダメだ。 そう留まった。
「じゃあね、白石…君…」
「白石君」これが最後の意地のつもり。
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