5話
「あっ、苺加ちゃんっ!」
昨日、部員のみんなに話して昨日の後輩をマネに勧誘することにした。
朝練が終わって着替え終わるとちょうど苺加ちゃんは登校してきた。
部活には入ってないんだと、柳君は言っていた。
「あ、先輩。おはようございます。……あたしの名前知っててくれたんですね。嬉しいです」
「うん、もちろんだよ」
昨日知ったんだけども。
「…で、えと……本題なんだけど……」
「はい」
「断るなら、断ってくれてかまわないんだけど………。テニス部のマネージャー私と一緒にやってくれないかな?」
「マネージャー?あたしがですか?」
苺加ちゃんは目を一瞬見開く。
「だめ……かな………?」
無理を承知なのは分かってるつもりだ。
部活に入ってないのももしかしたら何か事情があったのかもしれない。
そう頼んでから思いついた。
「いいですよ。やります。先輩のこと少しでも支えれるように頑張りますね。」
しかし苺加ちゃんの返事は私の喜ぶ返事だった。
「じゃあ、今日早速来て貰っていいかな?」
「はい!もちろんです」
「迎えにいくよ。何組?」
「2年D組です」
この時はまだ知るよしもない。
「麻原苺加です。しっかりなまえ先輩に仕事を教えてもらって早くみなさんをサポート出来るようになりたいです。よろしくお願いします」
「可愛いじゃん。赤也好きなんだろぃ?」
「だから、違いますってば!」
「じゃあ麻原、さっそくなまえから仕事を教えてもらえ」
「はい」
「じゃあ、苺加ちゃん行こうか」
テニス部みんなの反応もいいみたい。
やっぱり苺加ちゃんでよかったな、と改めて思う。
「タオルは向こうに洗濯機あるからそこで洗う。干す場所は部室の隣にあるから。」
苺加ちゃんはしっかりメモを取っていく。
今までにやめてったマネじゃありえない事だ。
「ドリンクは粉と水の割合間違えなかったらおいしくなるから。さらに自分で改良してみてもいいかも。
スコアとかはたまに取らされるだけでだいたい審判がやってくれるから覚えなくても大丈夫と、………これくらいかな?」
「ありがとうございますっ。……先輩はこれを全部一人でやってたんですね…。
やっぱりすごいですっ!」
「これから二人で頑張ってこうね。わからないことあったら聞いてね?じゃあそろそろ時間だから着替えよっか」
更衣室に行き、着替えてるとふと苺加ちゃんが言葉を発した。
「先輩、彼氏とかいるんですか?」
「え?」
「いや、先輩可愛いですからいるんだろうなって…。」
「かわいくはないけど…、まぁ、一応ね。」
「嘘っ!!誰何ですか!?」
「……さっき紹介したけど、テニス部部長の人だよ。」
「…それって幸村先輩ですか…………?」
声のトーンが変わった。
「………うん…。」
こうゆう声を聞いたことがある。
声質が似てる、とかそんなんじゃなくて、
トーンが変わって、
少し寒気がするんだ。
「そーなんですか!美男美女カップルですね!うらやましいですっ!」
戻った。
知ってる、
思い出したくもない、あの日のこと。
「ありがとう…。」
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