4話
「…可愛かったな……」
「ん?誰の事?」
「同じ委員会の子なんだけどね、可愛かったんだよ。性格も良さそうだったし…」
「それって麻原苺加のことじゃないッスか?2年図書委員で可愛いっていったらそいつしかいないッスよ!」
「あー、そんな子かも」
図書委員名簿でかわいらしい名前の子がいるなぁ、なんて思ったりしたのが数ヶ月前。
「部長っ!麻原をマネにしたらどうッスか!?ミーハーじゃない女子なんて珍しいッスよ!」
「確かになまえの負担は減るけど…」
精市はチラッと私を見る。
精市は私の事を知っている。
私がどうなるのか、を。
「私はいいと思うよ。ほんとにいい子だし」
「いいのかい?なまえがいいなら俺はそれでいいけど……」
「うん、じゃあ私明日話してくるよ。あー、楽になるなぁ…。赤也君も可愛い子入ってきて嬉しいでし」
「うっ…。そんなんじゃないッスよ!なまえ先輩のほうが好きッス!」
「はいはい」
精市の顔は不安そのものだ。
赤也君が去って行き、あたしと精市の二人だけになる。
「精市、大丈夫だから。心配しないで。最近は以前よりずっと楽なの。…少し苦しくなるくらいで。テニス部のみんなにもばれてないでしょ?」
「朝練の時だってあんなに苦しそうだったじゃないか。…確かにばれてないかもしれない。……もう、話しても……」
「それはっ……怖い………」
思わず大きな声を出してしまった。
もう一度息を整えてから言葉を話す。
「我が儘だってわかってる。けど……精市が……精市がいてくれるだけであたしの支えになってるの…」
「なまえ…」
「大丈夫だから…ねっ?」
「………無理はしないでよ」
「もちろん」
精市は微笑む。
その笑顔が、
あなたの存在が、
あたしを十分に支えてるんだよ…。
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