もしも雨が止んだなら… | ナノ
1話

「今日は一日晴れるでしょう。」

いつも天気予報を見てから家を出る。
それがちょうどいい時間だし、傘を持っていくか、持っていかないのか決めるのにいいし。
電車の時間は決まって一定だから、私も一定の時間に出よう、と少しわけのわからないプライドに縛られてこの時間は常に貫きとおす。
まだ少し薄暗い時間帯。
まだ通行人は少ない時間で、蛍光灯がチカチカと光っている。


今日もまた一日が始まるのか。


そんなことを思いながら一歩一歩足を進める。

動かしたつま先が落ちていた石ころを蹴った。



*



「ふーっ…」

時間帯的に通勤ラッシュは避けられて、少し人はいるけれど、それも本当に少し。
朝の学校までは私の休憩時間になっている。

「おはよう、なまえ」

駅に着き扉が開いて入ってきた緩やかな青いウェーブ。

「あ、おはよう、精市」

彼はあたしの隣に腰を下ろす。

「いつもなまえは朝早いよね」
「精市もだよ」
「俺はなまえがいるからこの時間に乗るんだよ?」
「あ、そうだったんだ。知らなかった…。いつもたまたまかぶってるのかと思ってたの。」


彼はふっと微笑んだ。

















これから起こることなんて、全く予想できない。


想像くらいならできるかもしれない。
けれど、それはあくまで「想像」。
現実に起こりえない可能性のほうが高い。



しかし、そんな想像も思い描いた本人が実行すれば「想像」ではなく「現実」になるのだ。


















































「なまえ先輩ーっ!おはようございますっ!!」


背中に衝撃を感じ、振り返るのはいつもの事。


「おはよう、赤也君。………急に抱き着いてくるのはびっくりするかな?ほら、身長だって赤也君のほうが大きくなったんだし」
「そうですけど……俺なまえ先輩好きッスから!」
「毎回言うけど、それは本当に好きな子に言おうね」
「本当ですってばー!」
「そしてこれも毎回言うけど、ごめんね、あたしには精市がいるから」
「そうだよ、赤也、人の彼女に手出す気じゃないよね?」
「そっ!そんなつもりはっ!」


「ちょ…!仁王君っ!みんなのドリンクに何入れてんのよっ!」
「何にも入れてないゼヨ」
「入れてた。私見た」
「プリッ」


「ドリンクもらうぜ………ってマズッ!何入ってんだよぃ?!」
「酢昆布ナリ」
「ふやけないの?」
「すり潰したんじゃ」


「ごめん、ブン太君っ。今すぐ作り直すから」
「仁王君。女性に手間を取らせてはいけませんよ」
「ありがとう、柳生君。けど、もう仁王君もやらないと思うし。」


「なまえはいつまで苗字呼びにするんじゃ?できればまー君で…――「仁王…?」……プリッ…」
「ドリンク作り手伝うぜ!…ジャッカルが!」
「俺かよっ!…けど、手伝うぜ」
「ありが……――「ありがとう。けどみんなは練習して、と言う確率92%」…柳はいつも言わせてくれないよね」


「大丈夫か?仁王の奴たるんどるっ!グランドでも走らせるか…」
「真田君っ、大丈夫だから。練習して」
「そうか?」
「うん。本当」



言わずもがな私はテニス部のマネージャーをやっている。
大変なこともあるけど、みんながテニスをしている姿が好きだから。
それをサポートしたいって気持ちがあったから。



「じゃあ、頑張って。」
「『おうっ。』」


みんなのテニスが見られればそれでいい。



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