▼ 6
『生きてるか、クソガキ。…なんだ、しぶといな。まあそんなことはどうでもいい。喜べ、お前兄になったぞ』
ボロボロの俺に唐突にそう言い放ったべリウムに思い切り胡乱気な視線を送ったのを覚えている。まあ即座に殴られたが。ご丁寧にその生まれた赤子がが先祖返りだとも知らされたし、同時に『忌み子』という存在も教わった。
どうやらはるか昔に生まれた先祖返りの双子が暴君だったらしい。それから先祖返りの双子が生まれたら殺すか一族から追放されてきたのだと言う。
『可哀想になあ、あのガキ共今日のうちに殺されるぞ』
多分、その一言が起爆剤になったのだろう。あれだけ逃げることを諦めていた俺が突然鎖を破壊して双子を助けに行ったのだから。
それから今に至るわけだが、今度は兄が捕まるとは思いもしなかった。実際本当に捕まっているのかさえ怪しいが、大人しくしているに越したことはないだろう。
「これで手出してたらどうしてやろうか」
とりあえず、手を出した連中は皆殺しにしてやる。それからべリウムにも責任とってもらわなければならないだろう。従兄弟だからって容赦するほど寛容ではない。そこだけは覚悟してもらいたい。
****
部屋は甘い香りに包まれていた。広いテーブルに並んだのは高級そうなお菓子たちとひとりひとりに淹れられた紅茶。まるで一昔前の西洋のティータイムのように落ち着き払い、優雅な時間が流れている。
「で?いい加減にしてくれない?俺そろそろキレちゃうよ?」
そんな時間をぶち壊したのは可愛らしい笑みを浮かべたニアだった。それに同意するようにさりげなくお菓子に手を伸ばし満喫していたメアも小さく頷く。二人の視線の先には先ほど部屋に現れた一人の男に注がれていた。
「怒った顔も可愛いね」
だと言うのに威圧された当の本人は穏やかな笑みを浮かべて二人に告げるものだから、それを見守っていたアハトは苦笑するしかない。
昔から奴はそうだった。常に朗らかで誰にでも優しい。誰からも頼られる存在であったが為に、抱え込むことも多かったのを知っている。愛すべき存在にはとことん優しく、何があっても基本的には怒らず甘やかす。
だからこそ裏目に出たことも多々あったのだが、それは今は置いておこう。