ミュウツーが困る夢


「*に手を出した日が貴様の命日だと思え」

彼女の前に男性が現われる度、テレパシーで投げ掛けてきた言葉。
それが今、彼自身の体に重くのしかかっていた。

手持ちの葛藤など露知らず、目の前で安らかに眠る*。
その姿は、ミュウツーの自我を崩壊させるには十分なものだ。
何度彼女の瞼にかかった髪を払いのけ、その四肢を自分のものにしたいと願ったことだろう。
何度彼女の薄い唇に口づけを落とす夢を見た事だろう。

『嗚呼、何故*は此処まで美しいのだろうか。まるで世界中の美しさのかけらを一つ残らず集めてもって来たかのような美しさ。こんなに美しい生き物を私は未だかつて見た事が無い…』

そして、ミュウツーにとって最悪の相手が、ミュウツーにとって最悪のタイミングで隣に居た。

「ラルトス……っ」

『あら? いいのかしら。此処で私を葬ったら*が悲しむわよ?』

彼女が数日前にゲットしたポケモン、ラルトス。他の人間やポケモンの感情を読む事が出来るというポケモンだが、このラルトスの場合、少し変わっていて―

『まさか、相手が心の中で考えている事を一字一句当てられるなんて、知ってたらわざと倒してたでしょ? ボールに入れさせなかったでしょ?』

意地悪な目つきで言い、ミュウツーの横で飛び跳ねる。
*の寝顔を見ながら恋慕を募らせる、彼にとっての大事な時間。
それが今、ラルトスに浸食されていた。

『ほんっと、災難よねえ。これからはミュウツーが考えてるあんなことやこんなことまで…』

「黙れ」

ほぼ反射的にシャドーボールを放つが、それすらラルトスの予想の範疇だったらしい。
突然上げた可愛らしい悲鳴に反応してぴくりと動く*の瞼を見るなり、ミュウツーは攻撃の手を休めた。

「くっ…なんて奴だ」

『ふふん。それ褒め言葉だから?』

言うなりラルトスはぴょこんと*の体の上に乗っかる。
そして、見せつけるようにして寄り添い、眠り始めた。
軽くて温かなラルトスの抱き心地は悪くないらしく、*は安らかな表情でラルトスを抱きしめる。
それを見たミュウツーは悔しそうに拳を握り、とりあえず冷静になろうとポケモンセンターの外へテレポートした。

『ふう……なーんか虐めたくなるのよね、ミュウツー』

誰もいなくなった部屋の中に、ラルトスの思考だけが木霊する。
相手の思考が会話のごとく聞こえるラルトスにとって、脳内の考えと口にする言葉が清々しいほど一致するミュウツーは寧ろ好ましい存在だったのだが。

『だって…こんなに*の心の中を独り占めにして……ミュウツーの癖に……』

「ん…? ミュウ、ツー…?」

*の隣で身を捩ったラルトスに反応して、*の口から独り言が漏れる。
その言葉を聞いて苦々しげに笑い、ラルトスは彼女の腕の中から這い出した。

『それにしても…二人して考えてるプレイが一緒って……』

くすくすと笑うラルトス。今のところ、この奇妙な関係の目撃者は誰一人いない。







相変わらず亀より遅い更新で申し訳ありません…。
前回の更新から二ヶ月以上…っ!
そして重ね重ねお詫び申し上げたいのはオチが下ネタっていう。
ミュウツーは恥ずかしがりやの割には鬼畜なプレイが好みそうですね。

リクエスト、ありがとうございました!



10/07/15





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