幸せなグリーン


「グリーンってさ、幸薄そうな顔してるよね」

うちのジムは挑戦者が少ない。だからなのかは分からないが、ジムトレーナーが矢鱈と暇を持て余している。そうして暇になったバカがまた一人、慣れた調子でパネルの上を進んでひょいひょいっとやって来たかと思えば、何を言うか。人のことを、それも、雇い主であるジムリーダーのこの俺のことを、「幸薄そう」だと?
どういう意味だ、と詰問してやりたいところだが、悪戯っぽく笑う彼女を見るとそれも出来ない。惚れた弱み、って奴だ。そう、俺は彼女の事が好き…だったりする。
俺の周りには少々弱みを見せたくない人間が集まっているので(レッドや姉さんやジーさんがその筆頭だ)、誰にも悟られないよう日々頑張ってはいるが、それでもこういった時、それは出てしまう。

「何だ? そんなこと言いに来たのかよ。帰れ、仕事に戻れ」

煩い煩い。しっし、と手を振れば、*は渋々といった様子でこちらに背を向ける。
パネルに乗って自分の持ち場に戻るか、と思いきや。
ヒョイ、と手を上げて、ひらひらと振った。

「バイビー☆」

ぴょん、とパネルに乗る。
その手をがっしりと掴んだ。
バランスを崩しそうになった*の腰に手を回し、抱えて普通の床の上に引き戻す。

「誰から聞いた? いや聞くまでもねえな、レッドだな」

レッドの奴め、後でバトルでボッコボコに…は出来ないから、
シロガネに食料を持っていくのを三日遅らせてやる。はっはっは、飢えて精神的に弱ったところに現れて俺の有り難味を思い知らせてやる。

「うん、相変わらず酷い不憫っぷり」

俺の心の声を読んだのか、*が口元に手を当てて言った。
俺が笑われている…ことには間違いないのだが、それでもそんな仕草の一つ一つが見られるだけで俺の頬は緩んでしまいそうになるのだ。
可愛い。
いや、それでは語弊があるか。可愛いか可愛くないか、美しいか美しくないか。
そんな細かいことは、結局は個人の趣味嗜好や好みによって判別される。
しかし、目の前の*は、そんな判断の枠にかけることすら許されない。
パーツがどうのだのスタイルがどうだのを超越した、絶対的な可愛さ、美。

ん?なんだか話してて、自分が変態みたいに思えてきた。

「あーそうそう、実は言いたいことがあったの」

まだ体に回っていた俺の手をするりと潜り抜け、*は唇にそっと手を当てた。
くるんとした大きな瞳が、俺の視線とかち合う。

「グリーンがあんまり可哀想だから、私が幸せにしてあげようと思って」

「……何?」

聞こえなかった?
*が、ぶう、と頬を膨らませた。

「グリーンって鈍いよね。そんなんじゃ彼女出来ないよ? 寧ろ今此処でチャンス、逃しちゃうよ?」

もう一回言うからね、
*がにっこり笑った。

「私がグリーンの彼女になって、君を幸せにしてあげる」

「……バカだなお前」

わざわざそんなこと言わなくても。
俺は、お前が今、此処にいるだけで。

十分、幸せなのに。









このサイトではグリーンの扱いが酷い気がします、幸せにしてください!
とのことでしたので、ギャグ甘を目指してみました。
そして超ド級ストレートで幸せになってもらいました。
私の中でグリーンは永遠の不憫キャラです。
ゼニガメ選んだときとか、タケシに苦戦してるんだろうなーって思いながらニヨニヨしてました。
これからはグリーンもなるべく幸せになれるように頑張ります。
宜しければこれからもお付き合いくださいね!
リクエスト、ありがとうございました。


10/4/11








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