c:アンチラフメーカー 4 / 9 せっかく叔父が作ってくれた弁当も忘れて、友達に一言告げて購買へと向かうために階段を降りていく。 4階も降りんの、めんどーくさいな。降りるのはいいけど戻るために上るのがめんどうくさい。 「お前ね、それはねぇべよ」 ようやく1階にたどり着いた時に聞こえてきたのは、バイト先とはまた違った雰囲気の魚住さんの声だった。 落ち着いた大人の雰囲気とは違って、学生らしく楽しそうに笑っている。 丁寧な口調じゃなくて、砕けた喋り方をしている。 ああやって、自分を曝け出せる友達、俺にも出来るのかな。 俺には表面上の友達だけに思えた。 「あ、香月くん」 視線を向けていたことがばれたのか。 魚住さんがこちらに気付いて近寄ってくる。 隣にいた赤いパーカーの人がじろりと俺を見る。うっ、怖い。 その人で思い出したのは、中学の頃の苦手な人たちだった。 「誰、こいつ」 「俺のバイト先の後輩。いやでも、学校で初めて会ったねぇ」 「あ、の……俺、やらなきゃいけないことあるんで……失礼します」 適当に、曖昧な表現をして教室に逃げるため階段を登っていった。 「あれ、香月。飯買いに行ったんじゃねぇの?」 教室に戻れば、何も持っていない俺の手を見た友達が不思議そうにそう告げた。 「んー、あんまし食べたいものもなくて、お腹空いてないし」 そう言って、いつもの明るいと好評の笑顔を浮かべた。 ≪≪prev しおりを挟む back |