c:アンチラフメーカー 2 / 9

「かづ」

 呆れたように俺の名前を呼ぶ方向を向くと、喫茶店のオーナーである叔父がこちらへと近付いてきていた。
 休日、昼時も近付きそろそろ開店の時間だ。

「今日朝一から出てったと思えば……」
「へっへー、綺麗に抜けたっしょ」

 俺の明るい声に叔父は溜息を吐き出した。
 学校が近い、家がすごく遠い……そんな理由で俺は今、叔父の元でお世話になっていた。


「学校で指導されねぇの、それ」
「自由な校風の所だからダイジョブー!」

 にっかり笑えばまた溜息。
 あぁまた幸せ逃げた。

 からん、と扉の音が響いて、そこには先輩の魚住さんがいた。どうやら学校も同じらしいが、会ったことはない。


「おはようござー……あれぇ、香月くん?」
「センパイおっはー! 金髪にしてみたー、いいっしょー!」

 大きく手を振りながらそう言えば、にっこりと小さく手を振り返してくれた。
 近付いてきて、ぽふりと頭に手が乗せられる。


「うんうん、めんこいめんこい」
「めんこ……?」
「可愛いだとよ」

 叔父の声に、俺はむすりと表情を変えてみせる。
 可愛いって。かっこいいの間違いじゃないか、俺の方が身長も大きいのに。


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