12:パーカーヒーロー 6 / 7




 ……それだけ?
 ……子供? 子供なのかな?
 楽しそうに笑う先輩。


「ガキんとき憧れてた人が着てたの、真似してたんだわ。ほれ、よくあるべ、ガキってすぐ真似すんの。そうしたら今更手放せなくなったっつうか」


 そっちの方が主な理由なのか。
 その言葉を吐き出した弥生先輩の表情が少しだけ曇った……気がした。


「まぁ今は憧れとかじゃなくてクソ野郎だけどな! あんのクソジジィ!」


 そこまで?
 先輩、クソジジィとかクソサラリーマンとかクソつけすぎじゃない? って、そんなことはどうでもいいか。
 何か嫌なことがあったんだろうか「クソジジィ」さんと。

 ……まぁ、そこまで聞いていいのかわからないし、聞く必要もないのかもしれない。


 学校が近くなってくる。
 ざぁざぁ降る雨は私たちの周りの音を小さくしていく。

 いっぱい生徒がいるはずなのに、なんだか世界に私と弥生先輩しかいないような錯覚にすら陥らせた。



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