11:手を繋いで 8 / 8

「美幸ちゃん、電車だっけ!」
「あ、うん。香月くんは地元?」
「うん、この田舎がマイタウン!」


 田舎って。
 店結構あるし田舎ではないと思う。お洒落なカフェなんかもあるじゃないか。


「今日は俺これからアレンジやるから帰るけど、今度こーめーちゃんがバイトしてるときに遊びに行こ!」

 お洒落だなぁと思ったカフェを指差して、香月くんは楽しそうに笑う。
 魚住先輩、あそこでバイトしてるのか。そういえば香月くんも同じところでバイトしてるんだっけ。


 送るね、なんて言った彼は私の手を引いて駅へと歩いていく。
 にこやかな少年は思春期というかなんというか、そういう恥じらいは持っていないようだ、

 大丈夫恥じらいはない。私にあるのはこれが見られてた時の女子からの嫉妬への恐怖だけだ。



「じゃあね! また明日!」
「うん、バイバイ!」


 ICカードを改札機にかざして通る。
 私が駅のホームへ向かう、見えなくなるまで香月くんはにこやかに手を大きく振っていた。




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