前の方の席に座っている人が嫌そうに声を漏らしていた。




「……ちょっと豊平、私の弁当どうしてくれんの」


机と共に散らばった弁当を見て、安藤さんがテンションが低いまま呟いていた。




「弁当ー?はぁ、知らね」

「浩介ぇ、ランチくらい落ち着いて食べない?」

「……それは命令か、颯」

「いや?アドバイスさぁ。俺に被害がなけりゃ何をしても構わないよ」



へらへら笑う五十嵐。

2人は名前呼びなのか、どうでもいいけど。




豊平が倒れている中里のネクタイを引っ張って無理やり持ち上げる。




「逃げてんじゃねぇよ」

「にっ……げて、っ、わけじゃ……」



中里の声が恐怖からか上擦っていた。





「朝は人間揃ってねぇし、授業中は何もできねぇから、昼が楽しいんだろぉ?なぁ!」


「ふっ……ぐ!」



豊平がネクタイを引っ張ったまま中里のお腹を勢いよく踏みつけた。


中里が苦しそうに、嗚咽を漏らす。





「おいおい男のくせに泣いてんじゃねぇよチビ」

「いっ……」

「細いなー中里」





やめなよ。

そう言い出せない。



何で?

怖いの?
最初は言えていたのに?


良くない?逆らっても。
制度とか関係ないし。



私は怖いのか。

昨日の「罰ゲーム」を見て。
何でもありだと、認識したから。




弱い。




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