彼は靴を履き替えて逃げるように教室の方へと走っていった。



……私も教室に向かおう。







「オハヨー香恋ちゃん」


隣の席の陽那がいつものように手を振って挨拶してきた。




「おはよう」



当たり前に返事を返した。




やっぱり教室は静かだけど……まぁ、テスト前よりは話し声が聞こえてくる。


話すと言っても、左右の人……成績が近い人とぐらいだけど。




いつものように田中が教室に入ってきて、ホームルームが行われる。


そして田中が出て行き教科担任が現れて授業が始まった。



授業くらいだ、平和なのは。



……嫌いだった授業が好きになれそう。

なぁんてね。





授業が終わった。
4つの授業は何事もなく終わり、昼休み。




「香恋ちゃんいちるちゃん弁当食おー」


「お腹すいたー」


陽那といちるがいつものように近付いてくる。



そうだ。


いつものように。




上位と目を合わせなければいい。
楽しくランチをすればいい。


目をつけられなきゃ、いいんだ。





「おい」





豊平の声が響く。


それは、私たちに向けられたものじゃなかった。



「弁当持ってどこ行くんだ?」

「……と、友達の所に」



豊平と視線が合っているのは、お弁当を持って教室の入口から出ようとしている中里だった。




豊平は中里に近付いて、肩を掴む。




そのまま、教室の方へ投げ飛ばした。






「……っ!?」



がちゃん、と大きな音をたてて中里がぶつかった机が倒れる。


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