朝日祭2






私に選択権は……ないんですね。


有無を言わせない笑顔がそういってる。




まぁ……やることないし一緒にまわる人もいなかったから、いいけど。




「妃代先輩はどこか、みたいところはありますか?」

『雪村くんのクラスのロミジュリ』

「……男しかいないロミオとジュリエット?楽しいんですか、それ」




楽しそうじゃない?

化粧の腕が問われる。


というか、本気で行くのか、ウケ狙いで行くのかが謎だよね。




『ちょっと寒そうだけど、外行ってみない?』



校門あたりが宣伝や外で模擬店を出しているクラスで賑わっている。


「……そうですねー」


本当寒そうですけど。と外にいる人が厚着をしているのを見て嫌そうな顔をした。



まぁ、楽しそうだしいいじゃないか。



未来くんを引っ張って校内を後にした。







可愛い制服をまとった、可愛い女の子たちがたくさんいる。


うわぁ、華やか。
制服が同じだから一体感が出てる。



自分の着ている制服をちらりとみて、ふぅとため息をついた。



『……女の子欲しい』

「僕の子でも産みますか?」

『自重してくれる?』



そういう意味じゃない。

いま服を見たのであってお腹を見たわけじゃない。



同じ学校に、同性。そう、女の子!
これ重要だと思うのね。



クール系なお姉様でも良いしー可愛い系少女でもあり!

なんてガッツポーズで未来くんに話すとなんか引かれた。



「同性愛ですか結構です」



愛じゃないんだよわかれよ。
寂しいんですーお友達ください。

女の子、ぼっちなう。




「……妃代!」

前から聞き覚えのある声。



……ん?目の前に可愛い少女がいらっしゃる。

ぎゅうってしたいその子。




『まややん!』




彼女の隣には落ち着いた大人の男性。

まややんの彼氏、大学生なんだよね。





「来ちゃった!メールしたんだけど返信なくて……会えて良かったぁ」



まややんの言葉にケータイを開く。

あ、メール気付かなかった。




『ごめんごめん』

「あー、その人にしたの?」



その人にしたのって?


まややんの視線の先には未来くん。


あ、婚約者候補のこと話したもんね前。



『えーっと、いやぁ……』



まだ決まってませんなんて言ったらどうなるんだろうか。



まややんはせっかちな女の子だ。

早く決めなよ!だなんて催促してくるだろう。




未来くんはまややんと彼氏さんに笑顔を向けて「はじめまして、黒松未来といいます」と自己紹介をする。



よかったね、未来くん。
まややん小さいから初めて見上げられてるんじゃない?
と、からかいたい……


「他の婚約者さんも見てみたかったんだけどなぁー!お姫様をとりあう王子様!きゃーっ夢みたい!」

……そんなすてきな物語じゃないですよー?




「学、いこっ!」そういってまややんは彼氏さんを引っ張っていく。

……相変わらずパワフルだなぁ。



「じゃあねー妃代!お幸せにーっ!」



まややんは大声でそう言いながら校内の中へと向かっていった。




「……人に話してたんですね」

婚約者候補のことだろうか?


『うん。夏ぐらいに。親友くらいには話そうと思って』

「明るい方ですね」

『可愛いでしょ?あげないからね』

「いりませんし妃代先輩のものでもないでしょう」



いいえ、この世の可愛い子はすべて私のものです。
これ、絶対。



さぁて、どこ見ようか?

なんて、未来くんに言うとどうでもいいと返された。


もう、ノリ悪いんだから!!


『あっ』



目に映ったのは、運営と書かれたハッピを着た人物。


遠くてよく見えないけど、あれ会長じゃない?



『会長発見!未来くん行こう!』



会長のクラス何やってるか聞いてみよう!


「……子供じゃないんだからはしゃがないでください」



不満そうな未来くんを引っ張り会長の元へと走る。




『会長!』

「え?」

『あれ?』

「あれ、桃瀬ちゃん」



会長じゃ、ない。



『えーっと……』



見覚えはある。

あの人だ、臨海学校の時にいた会長のお友達。



「あぁ、どうもこんにちは。杉山副会長」



そう、杉山。杉山卓哉先輩!

……副会長って、この人だったのか!



「うん、どうも。大和なら自分のクラスの方にいるよ」



くすり、と卓哉先輩が私を笑う。

間違えたからか、恥ずかしい。




『……ありがとうございます』

「あはは、ハッピ着てたから間違っちゃった?可愛いなぁ」



何が可愛いんですか。

からかわないでください。



「随分大和に懐いたんだなって思って」



頭をぽんぽんと優しくなでられる。

懐いたって……そんなことないです!



お兄ちゃんみたい、卓哉先輩。





突然、右手が引っ張られる感覚に襲われる。




「行きましょう、妃代先輩」

『え、あ、うん』

「失礼します」



「うん、じゃあね」



にこりと笑って卓哉先輩は手を振ってくれた。


痛いよ、未来くん。





 

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