朝日祭1





どんな学校にだって、他校生,一般の方とふれあう機会がある行事が1つはあるものなんです。



「いらっしゃいませー!」





いつも以上にざわめく学校。


本日、朝日学園の学校祭……朝日祭でございます。




自分のクラスの焼きそばを頬張る。




「ひよこ、お前食ってねぇで働け!」

『私のシフト今じゃありませーん』



今私はお客様として自分のクラスの焼きそばを食べてるんですぅ。



私の言葉に蓮が呆れたような視線を送ってくる。




『このシフト表さ、蓮仕事入り過ぎじゃない?』



ほとんどの時間入ってる気がする。
というか、入ってる。


「なんかもう働いてないと落ちつかねぇんだよな」



こいつ、高校生にしてすでにワーカホリックだぞ。
仕事中毒になってる蓮。
……休ませた方がいいんじゃないかな?




クラスメートが遊びにきた他校の女子と楽しそうに話しながら仕事をしている。

彼女できるといいね。




学校全体の雰囲気が柔らかい気がする、むさ苦しくないよね!
人が多いという点では暑いけどね……秋なのに。




「祭だからって浮かれてるリア充は爆発してしまえばいい……!」



うぅぅ、と泣いた振りをしながら御門くんが呟いた。



『女の子と話さないの?』


行事って彼女作るチャンスじゃないの?
……ナンパを推奨してるみたいじゃないか私。


御門くんは持っていたヘラを私にビシリと向けた。

ちょ、焼きそば飛んできたんだけどやめてくれる?



「話してるうちに他の人のとこ行っちゃうんだもんみんな!」



拳をわざとらしくたたきつけたところは鉄板で、慌てて冷やしている。

……御門くんってやっぱり馬鹿だよね?




「俺のどこが悪いと思う妃代ちゃん!」


『軽そうなところとか』
「軽いところ」
「壮介は軽そうだからなー」


「陽ちゃんと蓮ちゃんには聞いてないよ!!あと、みんな同じ言葉ハモらないで!」



御門くん話してたら楽しいけど軽そうで恋愛には発展しなさそうなタイプだよねっていうお話なのですよ。


「それに、俺にだって好みはあるんだから女の子誰でもいいってわけじゃないんだよ!」



へんっ、と拗ねたように御門くんがそっぽを向いた。

いいわけにしか聞こえません。



御門くんが視線を教室のドアの方に向けては瞳を輝かせた。


何かあったのか?
私もドアの方に視線を動かした。



そこにいたのはおしとやかそうな、綺麗な女性。


「そうっ、俺はああいう女の人が――……」
「陽くんっ」



その綺麗な女性は陽くんの名前を呼んだ。

ええ、御門くんなんて当たり前ですが眼中になんて入ってなさそうです。




女性は嬉しそうに陽くんの腕に抱きついた。



ちなみに陽くんもまだシフトの時間じゃないのでお仕事側にはいない、お客様側の場所にいる。



「……ひっつかないでください」



言葉は嫌そうだけど、まんざらでもなさそうだな。
彼女さんだろうか。

表情が珍しく柔らかい。



「校門まで迎えに行くって言ったじゃないですか」

「早く着いちゃったから、早く会いたかったの!」

「連絡してくれればすぐ行きますよ。男子校なんですから、無防備にうろうろされたら心配なんです」



陽くんこの学校信用してない。わかるけどさ。

彼女さんらしき人、綺麗だし変な虫がつきそうだしね。



蓮が「陽、壮介が固まってんぞ」と苦笑しながら言うと、気付いたように陽くんが私たちの方を見た。



「そういえば紹介する機会なかったな。彼女の小春さん」

「元川小春【もとかわ こはる】です。よろしくねみなさん」




あぁ、やっぱり彼女。ですよねー。

へぇ、陽くんってこういう人が好みなんだ……


敬語使ってるし年上かな?




「じゃあ、俺行くから」



陽くんはひらりと手を振って小春さんと一緒に教室を後にした。



「……陽ちゃんが憎いっ!」





本日2度目の鉄板ダン。

また熱そうにして冷やしてる。


……だから、馬鹿なんでしょ?




お皿から焼きそばがなくなる。

さぁて、どうしようかなー……これといって行きたい場所はない。




とりあえず今働いている人たちに「頑張れ」と声をかけて教室から踏み出した。


天気がいい。

外で模擬店やってるクラスいいなー、売れるんだろうな。




売ったからって特に何もないんだろうけど。

時期的に寒いかもしれないし、というか朝は寒かったし。





カーディガンも厚手のものに是非とも変えていただきたい、学校指定のものだしー私しか着てないけど。

いや、男子も学ランの中に着てたりする?





人通りの多い廊下を1人軽い足取りで歩いていく。

時々他のクラスの人に声をかけられて、興味のある模擬店には立ち寄っていく。



「あっ、ももせーん!」



前から人を気にせず走ってくる少年。
わけのわからないあだ名をつけてくれた彼は生徒会書記、雪村正樹くんである。



『雪村くん……それは?』

「いろいろ!」



にっこりと笑顔だけど……



なにやら大きめの看板を背負い、運営と書かれたハッピのようなものを羽織っている。

そして手には食べ物やら縁日でゲットしたであろうものやらを抱えている。




『運営?』

「今日は生徒会の仕事ちゃんとしてるんだっ!ももせんはやらないの?」

『パス』




名前上私は……一応、メンバーなんだよねぇ。

運営って何やるんだろう。




「えー。ふくかいちょーも働いてるのにー!」

『え?副会長?』



いたんだ……





3年生の副会長さんはいい人らしい、部活で忙しくて生徒会のお手伝いはなかなかできないんだとか。

3年生なのに部活に出てるっていうのは、スポーツ推薦でもう大学も決まってるみたい。


というか会長卒業近いんだなぁ……生徒会どうなるんだろ、新しい会長は雪村くん?




思い出したように笑った雪村くんは大きな看板を私の目の前に掲げた。




「俺のクラスの出し物、劇でねー!ロミオとジュリエットやるんだぁー、俺もでるからももせん是非来てねっ!」



男だらけのロミジュリ……おぅふ。
楽しそうだね……





「雪村」

「うわっ!?」



突然後ろから押されたらしく、雪村くんが抱えていたものを落とし、自らも倒れ込んだ。

雪村くんが倒れたことによって見えるようになった目の前の人物はしれっとした顔をしている、悪いとは思っていないようだ。



「でかい図体で僕の目の前に立ちはだかって尚且つ僕の妃代先輩を独り占めするとは……楽しそうですね?」

『未来くん』

「痛いよ未来っ!」



未来くんは雪村くんを無視して私の手を引く。

あなたのクラスの方が遊びに行ったのかと怒っていましたよ、だなんて雪村くんに言い放つと雪村くんは慌てて教室へと向かっていった。




ふぅ、と一息ついて笑いかけてくる。




周りに散らばった物拾おうよ、他のお客さんに迷惑だ。




「妃代先輩、蓮先輩は?」

『ほとんどシフト入ってるよーあのワーカホリックは』

「そうですか。では、大和会長は?」

『知らない。生徒会の仕事で忙しいんじゃないかな?』



そう言うと、ニコリと笑う。

何か……企んでる?





「じゃあ、僕と一緒にまわれますね、学校祭」





 

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