マツバの言葉に、ノアが口を開く。

ぼとりと離された腕には牙の跡が痛々しく残っていた。


ノアが目を細める。
涙をぼたぼたと零して、マツバを見ていた。


「チガウ違う俺は、俺こんなことがしたかったんじゃない。マツバを傷つけたいんじゃない!」


自らの牙から滴るマツバの血を見て、ぎゅうっと口を閉じた。


「したくなくても本能でしてしまう。それがクソ人狼なんだろう?」


ユウトが狩猟銃を再びノアに向ける。

静止するマツバの声を聞こうともせず、ただただノアを睨みつけた。



「懺悔して後悔して神を崇拝して祈り続ければハッピーエンドに通ずるとでも思っていたか?」



ノアがぎゅうと唇を噛む。
ユウトの言葉に、反論もできずに。

マツバがユウトを睨みつけたが、興味もなしに口を開いた。
──人狼以外に用はないってか。


「この女が大切だってほざくなら、理性のある間に人間の言葉吐き出してとっとと死ね」




 

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「見えない臓器の名前は」
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