4-3:権利なんてないside智[ 2/4 ]
次の日、俺たちはにこにこ遊園地という、なんともふざけた名前の遊園地の中にいた。
ていうか、男4人で遊園地って微妙だな……すごく痛い。
溝渕と中井に引っ張ってこられ、俺はここにいる。平川は「なんか楽しいじゃん」ということで来ている。この教師、何なんだ。
俺たちの視線の先には、華と川谷。
これは、ストーカー行為なのでは? と思いつつ3人について行きながらアイスを食べる。
そもそも、遊園地に行くことになったのは溝渕のせいなのにな……
2人は絶叫系を片っ端から乗っていて、時々休憩をしたりしていた。
会話は遠くて聞こえないが、楽しそうに話をしている。下手すれば俺たちといる時よりも、笑顔なのかもしれない。
「……なぁ、もう帰らないか?」
「へっ? 早いって智ちん! どうせなら遊んで帰らないとっ!!」
溝渕が黙って俺を見る。
……わかってるんだろう? 俺たちには、邪魔する権利など少しもないということ。
もしかしたら、華は俺たちといる時よりも楽しんでいるかもしれない。
それに……溝渕、自分では気付いているか?
華が楽しそうにするたび、切なそうにしているのを。
さすがに、もう気付いているんだろう。自分が華を好きだということ。
華が来てから溝渕は変わった。
平川も、中井も……俺も変わっているのかもしれない。
1人でいつも食べていたご飯は、いつのまにか全員で食べるようになっていた。悲しい過去を、忘れることだってある。
そんな風に変えてくれた華の幸せを奪おうとしているのなら、俺たちはこんなことをせずに身を引くべきなのではないだろうか。
夕方になり、少し暗くなってきた。
結局、華と川谷はひたすら絶叫系を乗り続けていた。
気持ち悪くならないのだろうか? 最後になのか、2人は観覧車に向かう。
そんな時に、後ろから話しかけられた。
「あのぉ、何してるんですかぁ?」
見たこともない、女が4人。
「暇なら一緒に遊びませんか? 丁度4人ずつですし!」
中井を見ると、顔に“ぶりっこウザい”と書いてあった。
平川は何かを考え込んでいる。
溝渕は無視。というか気が付いていない。
もう閉園の時間なのに遊ぶというのだろうか、馬鹿だな。
俺は正直どうでもいい。