目覚めると、灰色の空が黒く淀んでいた。
いつの間にか夜になっていたようで。
……真穂は、ゆっくりと体を起こす。
相も変わらず、映ったのは仲間の死体と、リヤンの死体。
久住さんは、いないのか。
出血多量で死んだものかと思ったのに。
腹を押さえて真穂はゆっくりと立ち上がる。
めまいがちかちかする。
血は足りていないのか。
そろそろ誰か、来るかもしれない。
A班が戻ってこないことに驚いた誰かが。
なんとなく、ただ、なんとなく。
敵の男の足跡らしきものを辿ってみる。
人が倒れていた。
それは見覚えのある人だ。
……久住さん。
「久住、さんっ」
彼からの返事はなくて。
小さく震える声で何度か名前を呼んだ。
「……起きて」
嫌だ。
「こんなの酷い」
嫌だよ。
赤い雪に埋もれた彼は身動き一つ取らない。
青の軍服、赤い雪。対称的なその色は嫌に目立つ。
「……久住さん」
何がエリートだ。
何が、何が何が!
何も守れやしないじゃないか。
私なんて、何もできないのか。
「……ごめんなさい」
リヤン、守れなかったの。
貴方も、守れなかったの。
いっそのこと、私も死んでしまえば良かったのに。
そうすれば、こんな後悔に苛まれなくてもよかった。
どうして、あの人、私だけ殺してくれなかったの。
そんな偶然はいらないのに。
ぼろぼろと涙を落とす真穂。
それは、久住の肌を濡らす。
真穂の口から出たのは、鎮魂歌だった。
久住が前歌っていたのを、覚えていたそのワンフレーズだけを繰り返す。
彼の歌のように上手くはないけれど。
「うあ〜……」
嗚咽混じりの歌は、ずっと。
救援の部隊がくるまで、ずっと続いていた。
最期に彼が、
笑った気がした。
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ぶきっちょな鎮魂歌
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