一生、なのだろうか。
一生彼女は、俺の夢に現れるのか。
どうして、と繰り返して。
裏切り者、だと責めてきて。
自分だってしてきたことのくせに自分がされたときだけ相手を責めるなんておかしい。
お前だって、と返しても彼女には届かない。
仕方ないよ。
ねぇ。
ごめん。
悪かった。
許して。
もう勘弁して。
「刹那」
名前を呼ばれる。
「大丈夫?」
あれ、首は締めないの。
……と、思ったら、春樹か。
いつの間にか、目、覚めてた。
心配そうな顔をするそいつから目をそらして、大丈夫、と返した。
「飯食って仕事行こうぜ」
「あぁ」
寝ているはずなのに、ずっと起きていたような疲労感。
眠気はないけれど、疲れが取れていない気がした。
黙ったまま春樹がこちらを見続ける。
「お前ちゃんと寝た?」
「寝た、寝た」
「じゃあ何でだるそうなの」
呆れたような口調だった。
どうせ寝てないんだろ、とでもいうような。
いや、寝たよ。
あぁ、睡眠は取った。
「お前休んでろよ」
「これから仕事だろ」
「外周警備だし1人で大丈夫だろ!」
無理矢理布団に押し戻すような行為。
肩をぐいぐい押されて、ベッドにぼすりと落ちた。
何か買ってきてやる。
そう言った春樹は部屋から出て行った。
しばらく、黙って。
頭をぼすと枕の上に落としてそのまますり寄るように押し付けた。
寝たくないと思ってしまっているのは自覚していた。
彼女に会いたくないのだと、わかっていた。
責められるのは嫌いだ。
罪悪感に溺れるのは嫌いだ。
……後悔を感じるのは、嫌いなんだ。
だってそれって。
道具じゃないみたいだ。
なんも考えずにいたい。
なんも考えたくない。
ドアの開く音に、軽く視線を向けた。
アホみたいに大量のパンを抱えたアホがニッカリ笑って現れる。
俺のベッドの枕元にそれを落として、また笑った。
「じゃあ行ってくるわ」
わざとらしく敬礼をして背を向けたそいつの服の裾を引っ張った。
振り向いた春樹は首を傾ける。
「春樹、」
手に力を込める、無意識だった。
「──行かないで、」
「は?」
「あぁ、違うわ。仕事、行く。大丈夫だから」
慌てて言葉を変えて、立ち上がる。
大丈夫?の言葉に大丈夫。と何度も返した。
一人でいる方が大丈夫じゃない。
なんもしてない方が大丈夫じゃない。
彼女のことを、忘れてしまいたいのに。
行かないで、なんて。
女々しくて。
子供っぽくて。
可哀想な。
人間らしい、言葉だ。
過剰な依存を俺に向けるならさ、いっそ。
珠希のことを忘れるくらいその狂気に溺れさせてよ。
逃げるたび繰り返す夢
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