黒。
赤、赤、赤、黒。


目の前にいる人の顔は暗闇で見えない。


わかることは、身長が高いこと。
悪魔のような、存在だと思った。



悪魔は、私の両親を長い銃で撃ち殺して。

私の近くに立っていた。












私の住む国は、権力争いの抗争が起こっていた。


外国に対して強気に出るべきだという「武力派」の橋場派。
政治面で力をつけるべきだと主張する「文治派」の但馬派。



そして私の家族のように力がなくて受け入れられなかったり、中立的だったり。そんな人間達もいる。

大まかに分ければ3つだ。



そして最悪なことに、私の住む街は武力派と文治派がそれぞれ拠点としている街に挟まれていた。

そのためよくこの街でも銃声が鳴り響く。



外観は完全に人のいない街。

おかげで街は静か。
外にはめったに人はいない。


外に出て、軍人にでも見つかったら殺される。
引っ越そうにも、街の境を通って別の街に行こうとしたら撃たれる、らしい。




私たちは恐怖に怯えて過ごすしかなかった。

そんな恐怖が、当たり前になって。


いつものように
お母さんと
お父さんと

少ない夜ご飯を口にしていた時だった。



突然家に息を切らしながらいかつい男が侵入してきた。
肩を怪我しているようで、肩を押さえながら私たちを睨む。



こんなこともないわけではない。


私たちには人権とか何とかがないのだ。
殺されないように祈るだけ。


自由勝手に人の家を荒らして、命を奪うこの人達が
……大嫌いだ。




いかつい男が家の電球を割った。
一気に、暗くなる。


誰かの、足音が玄関から響いた。
威圧するような強い音。


いかつい男の、敵だろうか?

こんな時間帯まで争っているのか。



我が家の中で銃声が響く。


入ってきた人間は、顔はよく見えない。
月の明かりで微かに見える口元は、無感情的で、つまらなさそうに閉じていた。



その人もよく見えなかったからか、長い銃を構えて……人陰が見える方へと容赦なく撃ちだした。
すべての陰を。


私は床に座り込んでいたからか、まだ小さくていかつい男とは違いすぎたからか、狙われはしなかったけど。


何人か、倒れる音がする。

複数、それは。
私の両親も、倒れたことだとすぐわかった。



近くに、嫌な赤があることがわかった。


誰かの、血。

いかつい男の
お母さんの
お父さんの
血。



「……っひ、」


思わず、声が漏れる。




その悪魔のような人は、ゆっくりと、私の方に近付いてくる。


駄目だ。
殺される。
殺される殺される殺される殺される殺される。




「お母さん、お父さん……」

泣きながら、そう呟いた。



目の前に立つその人は、足が長くて。
身長が高いことが伺える。



恐怖に全身が震えた。

そして、とうとう恐怖が頂点に達して。
私は、意識を失った。











次に目が覚めたときには、誰かに背負われていた。

大きくて広い背中は知っているものではなかったけれど、何だかすごく安心した。



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