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6月拍手(基山タツヤ、半田、塔子、南雲)

■父の日(基山タツヤ)

「もうすぐ父の日だね名前」
「そうだね。タツヤはもう何か考えたの?」
「いや、まだなんだ。
これにしようかなと思うものはあっても皆と被ったりしたら困るからね…」
「じゃあリュウジや怜奈と相談って感じなのね」
「そういう事になるかな。まあ、同じ物なら予算を合わせて良いモノにも出来るし」
「さすがタツヤ…抜け目がない」
「そう…かな?そういう名前は何か考えた?」
「私は…」
「名前?」
「…、…ご飯作ろうかなって。父の日当日じゃなくても、お日さま園に来てくれる日に」
「成程。いつも作ってくれているから得意だし、良いんじゃないかな?」
「まぁ、普段父さんが食べている物とは格が違うんだろうけど…たまになら食べてくれるかなって」
「ふふ、そうだね。ところで何を作るつもりなの?」
「え?…カレーか、シチューか、ハンバーグ…かオムライス」
「…そ、そう…。洋食献立になりそうだね…」
「何か言いたい事ある?」
「いや、別に良いんだけど…何でそのメニューにしたのかなって。名前、和食のが得意だから」
「…、…ら」
「? 何て?」
「…から…」
「もうちょっと大きい声でお願い」
「っ野菜とかひき肉とか、成形してハートとか星マークに出来るから!後ケチャップで文字欠けるかなって思ったからっ!」
「え…、可愛い…」
「もう、いーよそういうの!子供っぽいって事でしょ、晴矢にも散々笑われたから言いたくなかったの」
「そんな事ないよ、父さん喜ぶんじゃないかな?高級料理だってハートや星の人参やハンバーグは出てこないし」
「…そうかも知れないけど」
「ねぇ、名前が嫌じゃなかったら」
「うん?」
「俺にも父の日の料理、一緒にやらせてくれないか?贈り物よりもその方が俺はやりたいな」
「…タツヤがやりたいなら、良いよ。別に断る理由ないし」
「良かった!じゃあ、それまでに練習しておかないと」
「タツヤ器用だから練習とか大丈夫じゃない?」
「いや、やるならきちんとしたものを父さんに出さないと」
「(凄いやる気だ)分かった、それなら私も頑張らないとね。じゃあ役割分担から決めていこう…!よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく名前!」


■折り畳み傘(半田)

「んー…」
「何、部室前で唸ってんだ名前。帰るぞー」
「真一…いや、傘差すべきか差さないべきか迷ってた」
「は?お前なぁ…こんな土砂降りの雨だぞ、差す一択に決まってるだろ」
「いや、今日降るか降らないか微妙な降水確率だったから折り畳み傘にしちゃったんだよね…天気との賭けに負けたわ」
「いや、持ってきてたら勝ちだろ…」
「こんな降水量じゃ折り畳み差したってどうせ濡れるんだよね〜…。そもそも折り畳み傘1回開いたら畳むの面倒臭いから開きたくないんだよね!」
「ちょっとは本音を隠せよ!ってか畳むのメンドイってなんだ、そういう機能のモノだろ!?」
「いいじゃん、正直に生きたって〜。ねぇ〜大きな傘を私に貸してよ、置き傘してるの忘れてうっかり今日も傘持ってきちゃた半田真一君〜」
「うるせー!ちゃっかり把握してんじゃねーよっ」
「と言いつつ、ちゃんと貸してくれる真一なのでした。優しいね〜!LOVE!」
「ったく…」
「え?いや本当に嫌だったら良いよ?折り畳み使うし」
「良いよ、帰り道どーせ殆ど一緒だし。使えよ…」
「ちゃんと日干しして撥水加工スプレー吹いて返すからご安心を」
「…母さん、喜ぶわ」
「でしょ、デキた隣の幼馴染 兼 彼女!」
「ハイハイ、言ってる間に帰るぞ」
「はーい」


■雨の月の憧れ(塔子)

「はぁ…」
「どーした名前、その溜息と顔、雨と一緒で鬱陶しいぞ!」
「鬱と…!塔子ちゃんそれは言い過ぎでは…?悪いのは私だとしても もうちょっと優しくしてよ…」
「悪い悪い、口が滑った…?いや、言葉の綾ってヤツだよ」
「いやもうそれは口滑ってるから!!」
「もー、謝ったから良いだろ!それよりどうしたんだ?元気ないな」
「(一番初めにそれが出たら良かったんだけどな…!)…えっと。
小さい頃に憧れてた事にジューンブライドって言うのがあって」
「あぁ、6月に結婚したら幸せになるってアレ?」
「うん。元々はヨーロッパの言い伝えが由来のモノで、凄く素敵だなって思ってたんだけど…」
「ふんふん」
「それが日本に広がったのはブライダル業界の企業戦略からだったって最近知って、ちょっと萎えてた…。チョコレートに結婚、とことん踊らされるなって」
「イメージ壊れたって事?別に良いじゃん、日取りとか言い伝えにあやからなくても幸せにしてくれるオトコ見つけたら問題ナシ!」
「簡単に言ってくれるね!?それが難しいんだよ〜!!」
「そうかぁ?名前ならあっという間に見つかりそうだけどな。
うん、絶対イイ人が名前の事 見つけてくれるって!」
「…本当?」
「本当本当!父さんについて色んな人を見てるアタシが言うんだから間違いないよ」
「そう…?じゃあ塔子ちゃんを信用して自分磨きでもしようかなぁ」
「そうそう、それが良いよ。
後さ、折角小さい頃から憧れてたんだから、企業がどうのこうのって腐るの止めなよ!
少なくともヨーロッパの言い伝えはイイなって思ったんだろ?」
「…うん」
「じゃあその気持ちは大事に持っていた方が良いよ。
何かに憧れる気持ちって簡単に湧いてこないんだからさ。
いつか出来る名前の大事な人との為にも、取っておいた方が良いって」
「塔子ちゃん…。ありがとう」
「ん!良いって事、アタシと名前の仲だからね!」
「ふふっ、そっか。嬉しいな。塔子ちゃんも何かあったら私に相談してね」
「分かった、その時はヨロシクな!」


■通り雨(南雲)

「(うぅ〜、今日梅雨の中休みで降らないとか言ってたのに土砂降りだよ〜!
お天気お姉さんの馬鹿バカ!!)は―…最悪…でも屋根のあるバス停あって良かった…」
「…名字、か?」
「はっ…、あ、南雲君?こんにちは」
「大丈夫か?すげェ降ったな」
「あはは、髪の毛ぺちゃんこになっちゃった…南雲君こそ大丈夫?」
「まぁ、何となく降る気がして傘持ってたから」
「おぉ、凄い察知能力」
「それより名字お前…、これからバス乗るのか?」
「ううん、私 徒歩通学だから。
バスは乗ったら楽だけどこんなに濡れてたら他の人に迷惑だしそのまま帰る〜。
雨除けに思わず走りこんじゃったけどね」
「歩いてだぁ…?」
「? 歩いて」
「…」
「えっえっ何?何か良くない事がある?」
「…、…コレ着ろ」
「ジャージ?」
「いいから早く着ろ、透けてんぞピンクが」
「はっっっ!!??」
「馬鹿。髪よりそっち気にしろよ…変な奴に目ェ付けられたら嫌だろ」
「うぅ…ご、ごめんなさい…お見苦しいモノを…。有難くお借りします…」
「別にそんな事言ってねぇケド…」
「?」
「何でもねー」
「そう…?あっ!あの、明日洗って返すから」
「急がねーから。それより ほら、傘入れよ狭めーけど。送ってく」
「いや、そこまではさすがに…!」
「良いから、何かあったら寝覚め悪い」
「…うん…。ありがとう」
「…悪いと思ってんなら今度は気を付けろよ」
「うん…ありがと、南雲君」
「…仕方ねぇから世話焼いてやるよ。今日だけな」

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